■「世界遺産」の価値をどう生かすか
さて、これだけ結構尽くしの”認証プログラム”ですが、なかなか二番煎じは難しく。同じくユネスコ関連の「ジオパーク」などは、日本でも登録を維持する負担に比べて知名度や観光誘客効果が低いということで「天草ジオパーク」など返上の動きも報じられました。
他日本でも各種団体など様々登録認証制度へのチャレンジを見受けますが、そうそう簡単に定着し盛り上がっているようには見受けられません。ここにもブランドとして地位が確立されたものを見れば簡単に思えるけれど、実際にゼロから価値化することのハードルは決して低くないという経験則が見て取れます。
一方で「世界遺産」で言えば当初はソニー、2015年からはキヤノンがメインスポンサーとなり最新鋭のハイビジョンカメラ画像を駆使して、世界の登録遺産を紹介する、TBS系列「世界遺産」という長寿番組には根強い人気があります。
映像クオリティと技術の高さをアピールする上で、「世界遺産」はまさに最高の被写体に違いなく、2次利用まで考えれば、マーケティング的な整合性も非常に高い好企画がゆえにスポンサーが変わりながらも長く放送されているように思います。
不思議なもので、人が集まる地価の高い土地にはさらに創意と工夫を凝らした建物が営々と建て変えられ、ますますその土地の価値が上がる好循環が発生するように、マーケティングも世界でも価値の好循環は発生するようです。
そう考えれば、今回日本で登録が勧告された2件を含めて、構えに不足ない状態に違いなく、「世界遺産」ブランドを生かした観光施策や振興策こそが重要でしょう。
特に「姫路城」や「厳島神社」のように登録遺産と建物や地域が一対一対応しているものはともかく、対象が「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」など福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・鹿児島県・山口県・岩手県・静岡県と地理的に広域にわたる場合もあり、そこは知恵が必要な部分であるように思います。
いずれにしましても、一生活者としてみれば「世界遺産」は、日本、世界のまだ見たことがない素晴らしい場所を再発見する絶好の地図・索引に違いなく、1,121件(2019年7月現在、文化庁ホームページ)の多くを訪ねたことがないことに今更ながら世界の広さと豊かさを知らされる思いでいるところです。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら