報道で触れられていないことといえば、ランクインした職種の獲得ポイント数である。特に小学生男子においては1位会社員(8.8%)2位YouTuber/動画投稿者(8.4%)3位サッカー選手(7.6%)4位ゲーム制作(7.2%)5位野球選手(6.4%)となっており、票は分散していると言えるし、1~4位は僅差で並んでいる。
「会社員」が示すこととは
すでにネット上でも指摘が相次いだのだが、この選択肢自体の問題も影響している。「会社員」という概念自体が広く、曖昧である。他は具体的な職種名、しかも専門職だが、この選択肢のみ曖昧になっている。ネット上ではこれのみ「雇用形態」となっていないかという指摘もあった。たしかに、「会社員」は暗に正社員のことを示しているという見方もあるかもしれない。
言うまでもなく、世の中にはさまざまな会社があり、従業員には正規雇用の人も非正規雇用の人もいる。さらに同じ会社でも事業や職種は幅広い。この「会社員」が何を示しているのかは明確ではない。
リリース文には、リモートワークで保護者が働く様子を間近にみることができたとある。さもありなんという話ではある。ただ、子どもたちは保護者の勤務先や、具体的な仕事内容を理解したのだろうか。リモートワークでは、むしろわからないのではないか。就活生を毎年、面談、インタビューしていて、身近な大人である保護者の仕事内容を具体的に説明できないという場面によく遭遇する。解決されたとは思えない。
これらのことを踏まえて考えると、特に小学生の部に関しては会社員が圧倒的に人気だというわけでもないし、この選択肢を作ったことで広く票を集めてしまったと見ることもでき、見え方はかなり変わる。
これは、就活生向けの人気企業ランキングなどにも言えることだ。毎年、このデータが公表されるたびに、企業の顔ぶれをみて「学生は安定志向だ」とか「大手ばかり志望して」などという意見がSNSにあふれるが、この小学生に対する調査と同様に調査方法、対象に注意したい。人気企業ランキングなどは、実施時期にも注目だ。就活前や初期段階のランキングの場合、単なる認知度調査、好感度調査になりかねない。就活後の調査などは、その企業の採用活動に対する評価だともみることができる。
春は特に新入社員や就活生に関する調査結果が多数発表される時期である。注意して読み解こう。まわりから情報弱者認定されないように。
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