フリーランスの進路相談室

難病を乗り越えた元フリーランスは、なぜ会社員に戻ったのか

Workship MAGAZINE
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■先生から伝えられた「最大限の治療をします」という言葉の重み

西山:難病だということは、どんなきっかけから判明したのですか?

ゆうせい:ある病院の整形外科の先生から「それだけ回っても原因がわからないなら、神経内科で一度診てもらった方がいい」とアドバイスを受け、大きい病院を紹介してもらったんです。そこで専門的な検査をして、ようやく国の指定難病である「皮膚筋炎」の診断が出ました。

 皮膚筋炎は、簡単に説明すると、免疫として機能してくれるはずの抗体が異常に増えて、自分の身体を攻撃してしまう病気です。皮膚や筋肉の炎症から筋力が低下していく症状なのですが、僕が診断を受けた時には肺炎も併発していたこともあって、すぐに入院が決まりました。

西山:そこから4カ月の入院生活に?

ゆうせい:いや、最初の入院では肺炎がわりとすぐに良くなって、20日ほどで退院できたんですよ。その時は「難病って言っても、大したことないじゃん」と思ったんですけど、2日後に身体が痛み出して、再び病院に行きました。

 その時たまたま、週に1回だけ大学病院から出張診療に来る医師がいたんです。その人が皮膚筋炎を専門に扱っている先生だったから、診てもらえることになって。そしたら「いますぐうちの病院に来てくれ」と紹介状を渡されました。

 数日後、その大学病院に行きました。診察が終わってから個室に呼ばれて、先生から「いまから重たい話をします」と言われて。「現状はこうで、かなり危ない状態です」「いま肺炎になったら、ほぼ死にます」「そうならないように、これから、最大限の治療をします」と伝えられました。

 「治します、治ります」じゃなかった。「最大限の治療をします」と言われたんですよ。「あ、これは死ぬんだな」って思いました。隣で聞いてた妻は、わんわん泣いてました。

 それから入院して、薬を投与し始めて、首にカテーテルを取り付けて、血漿(けっしょう:血液から血球を取りいたもの)を入れ替える処置血液の交換をしたり、さらにはガンに使う薬を点滴したりして。

 幸いにもそれらが効いてくれて、なんとか身体が回復してくれて、4カ月後に退院することができました。いまは経過観察として、月に一度の通院で済むくらいまで、体調も落ち着いています。

西山:そんなに危ない状態まで……。良くなって、本当によかったです。

■フレンドファンディングで救われた

西山:先ほど「体調がわるくなってから、仕事がほとんどできなくなってしまった」というお話がありました。込み入った話で恐縮ですが、入院後の医療費などは間に合ったのでしょうか?

ゆうせい:正直言って、無理ゲーでした(笑)。医療費については、指定難病の医療費助成や高額療養費制度があるので、一定の上限を超えた分は戻ってきます。それでも、難病指定は申請してから受理されるまで数ヶ月かかるし、高額療養費制度が適応されても、場合によっては月8~10万ほど自己負担することになります。

 入院中の食事代などは控除外なので、それも合わせると医療関連だけで月に20万~30万円がいっぺんに飛んでいくんですよ。加えて、家賃や光熱費などのほかの出費もかさんでくる。冗談ではなく、本当にお金が底を尽きてしまって、「このままじゃ生き残っても人生が終わってしまう」と思って……。恥を忍んで『polca (ポルカ)※』を頼ったんです。

※身近な友人や知人、TwitterなどのSNSのつながりのなかでお金を集められるフレンドファンディングのアプリ

西山:たしか、polcaがまだリリースされたばかりの頃でしたね。

ゆうせい:そうですね。いまとは違って、当時は集められる金額の上限が30万円に設定されていました。そこで「難病になって、お金がなくなってしまったので助けてください」と支援をお願いしたら、ありがたいことにすぐに上限の30万円まで集まって。

 「これで1カ月はしのげる」とホッとしていたら、周りの友人たちが「すぐにセカンド募集をやれ!」と言ってくれて。ボロボロ泣きながらもう一度募集をかけたら、それもすぐ上限まで集まったんです。「もう一回やれ!」とも言われたんですけど、さすがに申し訳ないと思ってしまって、3回目はできませんでした。

西山:周りの皆さん、温かいですね。

ゆうせい:本当に救われました。集まったお金は全部、治療費に当てました。それからほどなくして難病指定の申請が通って「月の自己負担額の上限が数万円になりますよ」と通達が来て。やっとなんとか先が見えてきたんです。

 あの時に支援してもらった友人、知人の皆さんには、感謝してもしきれません。何か返そうと一人ひとり連絡を取ったんですけど「いいよ水臭い」「困った時はお互い様だ」って言ってくれるし。カッコいいですよね。彼らが困った時には、僕が真っ先に力になって、同じことを言ってやろうって思っています。

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