「首都」でなくても都市は繁栄できる
筆者自身東京都民ですが、大阪が栄えることに何の異論もありません。むしろ世界を見れば、首都と最大都市が別々に共栄している国のなんと多いことか。アメリカのワシントンとニューヨーク。カナダの首都はオタワですが、最大都市はトロントです。オーストラリアはキャンベラが首都で最大都市はシドニー。
むしろ私が大阪人だったとしたら、強い異論があるにも関わらず「都」という呼称にこだわることの方がコンプレックスの裏返しのようで屈辱に感じるように思います。
せめてどうしても「府」という呼称を刷新したいんだったとしたら、まったく違う名前を考えた方がまだ良かったのではないでしょうか。新年号で識者が素晴らしい仕事をしたように、時間を与えられてしかるべき人々が依頼を受ければ、歴史的、文明的脈略をキッチリ踏まえた良案を出せるように思います。
重要な公共セクターのブランディング
ブランディングと言うと、どうしても民間企業の販売促進やマーケティングの延長上の取り組みという印象がありますし、確かに圧倒的に企業の取り組みが多いのですが、日頃から公共セクターのブランディングも我々市民の生活に影響が大きいだけに重要だと考えています。
例えば本連載でも成功事例として取り上げさせていただいた、「道の駅」が「認定道路休憩施設」などという国会答弁のような名前だとしたら今ほど利用されるインフラになり得たでしょうか。(【ブランドウォッチング】進化する「道の駅」はインフラのヒット商品 日本だからこそできた大発明)
例えば、原子力発電所が「超高効率低炭素発電」というようなメリット面に重点をあてたネーミングだったとしたら、もっと世論は説得されただろうか。「持続化給付金」という呼称は分かりやすいのだろうか、など色々考え出せばキリがありません。
土地の歴史由来にこだわった都市ブランディングを期待
まして、市民が日々生活する舞台となる住所です。少しでも誇れるブランディングをして欲しいというのが人情なのですが、大阪「都」構想をブランディング視点でみると、この実施案にもどうしても不満を言いたくなるのです。
提示された新特別区は「淀川区」「天王寺区」「北区」「中央区」の四区です。「淀川区」「天王寺区」はともかく「北区」「中央区」という名称はあまりにも即物的で味気ない。もちろん今までも使われて馴染みはあるでしょうが、やはりその土地固有の歴史や由来を掘り起こして命名して欲しかった。