作為を感じさせないから受け入れられる達人ブランディング
そんなある意味理想的なブランディングを実践しているヤマト運輸ですが、実際に各種のブランド評価調査などでかなり評価が高いことでも知られています。世界的ブランドであるアップルやソニーなどと同水準のスコアを獲得している調査もあるぐらいです。
そして私が何より強いと思うのは、そんな高いブランドを維持する活動があからさまな作為を感じさせないかたちで実践されていることです。やはり、日々街で寸暇を惜しんで荷物を運び届けてくれる、ヤマトマン・ヤマトウーマンの誤魔化しのない活動を超えるブランディング活動はちょっと想像できません。今回ユニフォームを刷新するにしても、ごく実用的、機能的目的が出発点にあることが感じられます。
ネット全盛時代となり、かつてのようにメディアや企業側と生活者の間に厳然とあった「情報の非対称性」つまり、持っている情報量と発信力の圧倒的な格差を前提とした一方的な情報発信は説得力を持たないだけでなく、むしろ嫌悪感さえもたれるようになりました。
そんな時代だからこそ更に伝わる、「ヤマトは我なり」という理念を愚直に実践するがゆえの信頼感。たかが新ユニフォーム、されど新ユニフォーム。ヤマトグループの新ユニフォームが体現するブランディングの極意は、他業種にとっても大いに参考となる点が多いよう思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら