ブランドウォッチング

再会したいお土産の「北の横綱」 六花亭にみるブランディングの必要条件

秋月涼佑
秋月涼佑

 新型コロナで大変だったのはどこの業界も同じで、悲しいことに日本全国例外がそう多くはありません。でも特に深刻なダメージを受けた業界をあげれば、やはり観光や旅行、航空、鉄道、宿泊など人の移動を前提にした業界であったことは間違いないのではないでしょうか。

 目に見えないウイルスを警戒しなければいけないという心理はそれでなくても清潔志向の強い日本人にトラウマとさえいえる影響を与えています。緊急事態宣言が解除されてもしばらく警戒心は解けそうにありませんし、そのまま生活スタイル自体が変わってしまう、変えてしまおう、という議論さえされています。

 ビジネスマンの出張1つをとっても、アフターコロナでの需要回復は厳しい見通しと言わざるをえないかもしれません。

 それでなくてもコロナ以前のリポートでさえ「2030年には出張マーケットは2015年から15%縮減しうる」(日本政策投資銀行と日本経済研究所の報告書)とされるなど、費用削減の観点からも企業では「テレビ会議やウエブツールによる代替」(前記報告書図表141)が検討されていたからです。まして今回緊急事態宣言中とその前後でテレワークが当たり前になったことを考えれば、テレビ会議で代替できる出張はごく自然に取りやめとなっていくのかもしれません。

 となると、我々が長年強行軍を恨みながらも、ルーチンから束の間離れる非日常的業務として勤しんできた出張も将来は贅沢な習慣と振り返られるのでしょうか。生産性を高めて利益を上げていくことがビジネスの宿命とはいえ、一抹の寂しさはあります。

 地元の創意工夫がつまったお土産物という豊かさ

 そして出張ならでは、同僚や仕事関係者、家族などへの手土産を欠かさない人も多いと思います。特に国内各地のお土産物の充実ぶりはどこにいっても素晴らしいものがあり、帰路の駅や空港で迷いに迷ってしまうこともしばしばですが、思えば今一番厳しい業界に違いありません。出張者のみならず、インバウンド、国内観光客ほとんどの需要が消滅してしまったわけですから、どう考えても大変です。しかも先の展望にも厳しいものがあります。

 今回のような未曾有の事態を経験すると、普段は当たり前に思っていた生活がいかに豊穣な生態系に恵まれて実現していたかを思い知らされます。お土産物なども、その一例かもしれません。一品一品はささやかなものであっても、それぞれに地元企業の創意と工夫がつまっています。パッケージやネーミングもナショナルブランドの製品のようには洗練されていないものもありますが、そこからそこはかとなく伝わってくる地元感にお土産物ならではの味わいが表現されています。

 ブランディングの手法がお土産に

 振り返れば、お土産物市場こそが近年ブランディングの考え方をかなり切実に取り入れてきた産業と言えるかもしれません。例えば老舗企業であっても、世代交代も影響しているかと思いますが、より若い女性に受け入れられる商品を作ろうとか、クッキー以外にもチョコレートの製品も欲しいとか、パッケージのバリエーションを増やそうと様々取り組んできました。製造現場と近い地元企業が多いこともあり、ある意味フットワーク良く製品開発を行えます。結果、空港や駅のお土産物売り場にはカラフルで目をひくネーミングの商品があふれるようになりました。もちろん目移りする苦労はありますが、それを含めて買う方にはありがたい選択肢の豊富さです。

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