彼らの望む傾向とは何か? クラフト感覚への希求だ。機械で作られた同じものが世の中に沢山あることを好ましく思っていない。人肌を感じられる自分だけしか所有できないものを欲しいと思う。
即ち、社会性が高いクラフト感覚のあるモノを求めるとすると、ふと思うことがある。
それは19世紀の後半に英国で活躍したデザイナーであり社会運動家であるウィリアム・モリスが先導したアーツ・アンド・クラフツ運動である。アーツ・アンド・クラフツ運動は、産業革命で大量の質の劣る製品が市場に出回ったことに対し、中世にあった職人の手によるモノを世に問うた。
モリスはテキスタイルやステンドグラスを作り販売したが、当時の富裕層から人気のある商品となった。高額だったのである。彼自身は労働者が社会のなかで活躍することを思想上は望みながら、実際のビジネスにおいては逆のかたちになってしまった。
こうしたこともあり、アーツ・アンド・クラフツ運動は20世紀初頭のドイツに生まれた建築とデザインの学校、バウハウスの源流として、即ち、近代デザインのスタート地点としてみられながらも、ビジネスの文脈においてはあまり敬意を表される対象とはなっていなかったとの印象がある。
しかし、これこそがラグジュアリーの歴史の一つの源として再評価されるべきではないか? いや、再評価される流れができていくのではないか?と、ぼくは思い始めた。