最強のコミュニケーション術

飲み会に埋まる地雷 「酒の席では〇〇したほうがいい」は思い込み

藤田尚弓
藤田尚弓

「思い込み」で失敗する恐れ

 伝え方や言い回しを変えると、自分を取り巻く環境が変わり、やってくるチャンスも変わっていきます。皆さんは自分のコミュニケーションに自信がありますか? この連載ではコミュニケーション研究家の藤田尚弓が、ビジネスシーンで役立つ「最強のコミュニケーション術」をご紹介していきます。

 第11回は「飲み会」がテーマです。クリスマス、忘年会、お正月と飲み会が増えるシーズンがやってきました。お酒を楽しみながらの会話は楽しいものですし、相手との距離を縮める効果も期待できます。その一方で、ちょっとした会話で失敗してしまう人も少なくありません。“地雷”が意外なところに埋まっていたりします。飲み会の会話ではどんな点に気をつければよいのか。よくある思い込みと、飲み会で試してほしい3つの質問テクニックをご紹介します。

「仕事以外の話題なら正直に意見を言ったほうがよい」

 飲み会では普段話をしない人と、仕事以外の話をする機会でもあります。仕事とは関係ない話だから問題ないと、雑談ではストレートに意見を戦わせていませんか。 

 「禁煙するべきだ」「結婚はしたほうがいい」「糖質はなるべく避けたほうがいい」など、私たちは生活に関わる様々なことに対して自分の意見を持っています。こういった仕事とは関係のないトピックであっても、私たちは自分と同じ意見の人と「一緒に働きたい」といった感情を持ちやすくなると言われています。

 「似たもの夫婦」「類は友を呼ぶ」といった言葉もあるように、意見が似ているかそうでないかは、好意に影響します。これは「態度の類似性」と呼ばれています。

 態度の類似性が好意に繋がる理由を2つご紹介しておきましょう。1つは意見が似ている人と一緒にいるとストレスが少なく快適に過ごしやすいこと。これは皆さんも体感的にわかっていることかと思います。2つめは、自分の考えが正しいと感じることができる会話が、心地良さを感じさせてくれることです。私たちは無意識に、自分と他者の態度を比較して、自分の考えが妥当か確認していることがあります。そのため自分の考えが正しいのだと感じさせてくれる相手には心地よさを感じやすいのです。

 では飲み会での雑談では、相手に同調するだけのほうが良いのでしょうか? お酒の量がほどほどで酔いがまわっていないときであれば、反対意見を言うのもアリだと思います。意見が違う場合でも、相手に批判や攻撃だと感じられないよう、丁寧に伝えることができればよいからです。上手に話を展開できれば補完の関係が生じ、むしろ好意を持たれやすくなることもあります。ただし、お酒の場では「意見の違い」がネガティブに働くことが増えやすいので注意しましょう。その理由については後ほど説明します。

「正しいことは教えてあげるべきだ」

 正しい考え方や、よりよい意見は周りの人に教えてあげるべきだと思っていませんか? 普段は大丈夫でも飲み会のときは少し注意が必要です。

 お酒を飲んでいないときでも私たちには自尊心を保つために、自分の考え方が妥当だと思い込みやすい特性があります。お酒が入るとこの傾向が強くなる人も少なくありません。

 アルコールによって理性をつかさどる大脳新皮質の働きが鈍くなると、伝え方に対する配慮は雑になっていきます。声のトーンや表情などの非言語コミュニケーション、選ぶ表現などに注意が向かなくなるだけでなく、さらに酔いが進むと「いや、そうじゃなくて」といった他者を否定するような言い方や、相手の話を遮るといったNG言動も増えがちです。

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