こうなると悪気がなく、むしろいいことを教えてあげているつもりでも、聞いている人からは「ゴリ押しされている」「自分の意見を否定された」と受け止められてしまうのです。これがお酒の場で「意見の違い」がネガティブに働く理由です。
「みんなも同じ意見だろう」
お酒の席で熱弁を振るう人に対して、皆さんはどのように接しているでしょうか。反論するという人もいると思いますが、「酔っている人はそっとしておく」「それとなく話を合わせてやり過ごす」という人も多いと思います。
そもそも私たちには「自分の他者の意見が自分と同じだろう」と考えやすい傾向があります。これは「フォールス・コンセンサス(偽の合意)効果」と呼ばれていて、日常生活の中で、知らず知らずのうちに自分と背景や価値観が似た人と多く接していることが原因の一つだと言われています。
酔って熱弁を振るっている自分に対して相手が「そうですね」「そのとおりです」と相槌を打っている場合は、同意しているのではなく、ただやり過ごしている可能性もあるのです。普段、部下や女性社員など自分に合わせてくれる人が多い環境にいる人、酔って熱弁を振るいがちな人は、特に注意しましょう。「きっとみんなも二次会に行きたいはず」「みんなもまだ飲みたいはず」といった判断が、実は迷惑だったということもあります。
次に、飲み会での失敗を減らす3つの質問テクニックをご紹介します。
飲み会での失敗を減らす「質問テクニック」
酔っているときのコミュニケーションの失敗は様々ですが、共通しているのが「話し過ぎてしまう」ということです。饒舌になってしまった場合でも、「話す4:聞く6」くらいにおさまるようにしましょう。飲み会でこれを実践するためにお勧めなのが、以下の質問テクニックです。
1. 自分の話の後は「○○さんはどうですか?」で終える
自分ばかりが長々と話すのでは、コミュニケーションをとるというせっかくの機会を無駄にしてしまいます。自分の話は早めに切り上げて「○○さんは?」と話者交替を促しましょう。このとき、会話に参加できていない人を指名すると、会話ベタな人も話題に入りやすくなります。
2. 「はい」と「いいえ」では答えられない質問を選ぶ
「飲み会にはよく行くんですか?」といった質問よりも「これまでで一番印象に残っている飲み会は?」といった質問のほうが、相手の話す分量を増やすことができます。
3. 相手が話題を選べるような質問をする
具体的過ぎる質問だと相手が返事に困ってしまうこともあります。話したくないことは避けられるような質問を心がけましょう。例えば「最近あった楽しかったこと」「今凝っていること」といったトピックなどもよいでしょう。年末であれば「どんな一年だったか」、年始なら「新しい一年の目標」というのもお勧めです。
お酒にはリラックス効果もありますし、酔えば抑制がやわらぎ、話しやすくなるというメリットもあります。飲み放題プランなども増えていますが、適量を守り、コミュニケーションを楽しんでください。
【最強のコミュニケーション術】は、コミュニケーション研究家の藤田尚弓さんが、様々なコミュニケーションの場面をテーマに、ビジネスシーンですぐに役立つ行動パターンや言い回しを心理学の理論も参考にしながらご紹介する連載コラムです。更新は原則毎月第1火曜日。アーカイブはこちら