ローカリゼーションマップ

人前の「寝落ち」許す日本文化は危険 外国人が驚く習慣の寛容度

安西洋之
安西洋之

 文化によって習慣は異なる。

 それでは、寝落ちへの寛容度と鼻水の処理の違いは、同じレベルで論じられるだろうか?パスタを食べる時には音をたてず、蕎麦を食べる時に音をたてる。これらの文化の違いと、寝落ちを同列で考えてよいことなのか?

 結論を言えば、生理的な音(鼻水からトイレでの音まで)への感覚の違いと、人前で寝落ちすることへの寛容度の違いは同列にならないと思う。どのような角度から考えても、人の話を聞きながら寝ても良いとは言い難い。どうしても睡魔から逃れられないのなら、黙って退出するべきだ。

 地下鉄などの公共機関のなかで寝るかどうかは、安全のレベルなどを勘案し、国によって許容度が異なるのは当然である。電車のロングシートで後頭部を窓ガラスに押し付け、口をぱっくり開けていくらいびきをたてようが、それは本人が恥ずかしいと思わない限り、他人が文句を言う筋合いのものではない。それでバッグから財布を抜き取られても、本人の責任だ。

 しかし、講演やミーティングに参加しながら寝るのは、他人への敬意に欠ける。他人への敬意自体に無関心であり、身体全体をもって無関心を表現するのは、社会における振る舞いとして敵意の表現にさえなることがある。だから外交上のトラブルを回避するためには退出するしかない。

 日本に独自の文化があるのは良いことだ。だが人前で寝落ちする文化は危険度が高すぎる。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンゲリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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