無味乾燥になりがちな流通ブランドにキャラクター性
そう考えると、生活者に支持されたこの「悪魔の」というコンセプト、ブランドを一発屋で終わらせるのはすごくもったいないですね。ご存知の通り、まったく認知がない新商品を広く生活者に知ってもらうためには莫大な広告費等マーケティングコストがかかります。恐らく世に送り出した方も予想していなかった水準のブランド認知を獲得しただろう「悪魔の」という望外のマーケティング資産を生かして横展開を図る戦略は、費用対効果上も確かに至極納得の戦略ではあります。
もう一つ、「悪魔の」シリーズをローソンオリジナルのブランドとして展開する作戦の良さは、コンビニオリジナルブランドにキャラクター性を与えることではないでしょうか。流通オリジナルブランドというのは、特にすでに存在するナショナルブランドを自社ブランドに置きかえるPB(プライベートブランド)に顕著ですが、そのブランドアンブレラの下で色々な商品や味が展開される関係上、パッケージやネーミングが中庸的で無個性になりがちです。消費者からすれば購買検討時にパッと見でPBと判別できることは良さでもありますが、ナショナルブランドの個性あふれる商品群に対して、ちょっとつまらない感じがしてしまうこともまた事実です。
でも最近ではローソンだけとっても「ウチカフェ」シリーズなど、より魅力的なオリジナルブランドを育てるための努力も怠りありません。きっと「悪魔の」シリーズは、そんなコンビニオリジナルブランドがより個性的、魅力的に進化していく流れに大きく貢献する存在であることは間違いないように思います。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら