セレクトショップの持ち味をゴルフの世界に
そんなファッション性と日常性の高度なバランス感覚というセレクトショップの持ち味をゴルフの世界に持ち込んだ『BEAMS GOLF』は、ファッション感度の高いゴルファー、特に若い世代に早々歓迎されました。勿論、各スポーツブランドも近年飛躍的にファッショナブルな製品ラインナップとなりましたが、多くのビジネス街のゴルフショップはまだまだビジネスゴルフ時代のアンチファッション文化から抜け出せていないように見受けられます(最近はプレミアムセレクトショップ開設の動きもあるようですが)。そんな中で絶妙な空白ポジションにBEAMS GOLFは異業種から参入し、あっという間に収まったというわけです。
原点の等身大を感じさせる、シンプルなブランディング
ブランディングの視点でみると、まったくの正攻法。BEAMSのもつオシャレの太鼓判感、中庸感を裏切らずにBEAMS GOLFとして展開しており効率的、説得力抜群のアプローチと言う他ありません。ファッション性を追求すれば先鋭的な方向に行きやすいものですが、人と競い合うような差別化は時代の空気ではありません。あくまで周囲と調和しながら、自分も仲間も楽しめるオシャレ。そんな簡単なようで簡単じゃない塩梅に長けたBEAMSのやり過ぎないブランディングは絶妙だと思います。
ロゴのデザインなどもシンプルなものです。原宿のインポートショップ時代の等身大感を感じさせてくれるお店作りと相まって、ならではの世界観を構築しています。
5月にウエア契約を結んだばかりの渋野選手が、わずか3カ月後のAIG全英女子オープンのメジャー大会を制覇するというラッキーもブランドの輝きに花を添えました。そもそも渋野選手という明るく素敵なキャラクターを見抜きいち早く契約できたのは、常に自ブランドの世界観を定義できているがゆえの然るべきマーケティング的成果でしょう。
渋野選手はご褒美でBEAMSブランドの洋服100万円分の特別ボーナスをプレゼントされたとのことですが、ファッションを楽しむアスリートという新たな世界観をBEAMS GOLFとぜひ築き、ますますゴルフを楽しく盛り上げて欲しいと期待しています。
【ブランドウォッチング】は秋月涼佑さんが話題の商品の市場背景や開発意図について専門家の視点で解説する連載コラムです。更新は原則隔週火曜日。アーカイブはこちら