そんな流れは、トッププロ自身が牽引してもいます。特に日本に限らず女子プロならではの華やかで個性的なファッションは、かつてはゴルフ場で見かけることがありえなかったタンクトップや蛍光色など、自らが率先してゴルフファッションのタブーを打ち壊す先兵となっている様相です。最近では、EVENなどゴルフをファッションやライフスタイルの切り口で紹介する雑誌なども人気で、ゴルフの楽しみの中でファッションが占める割合は確実に増えていると言えるでしょう。また、ストレッチやドライ、クール、ヒートなどの繊維素材革命もゴルフプレーのファッショナブル化に一役買っています。
そう近年ゴルフはファッションを楽しむスポーツにもなったのです。そんな潮流にセレクトショップの老舗BEAMSは早々に着目しました。
「オシャレなのにリアルクローズ」絶妙な中庸感
そもそも、服というのは体を視覚的・物理的に守り、体温調整などの機能を果たすことがその基本的な役割でしょうが、人間が社会的な生き物である限り、自己表現や社会的立場のアピールという自己演出の要素を抜きに語れないものです。そして、これがいわゆるファッションです。
1980年代、セレクトショップが人気になる以前は、デザイナーズブランドの全盛期でした。日本でもDCブランドに代表される、デザイナーの先鋭的な個性を前面に出したアーティスティックなファッションに生活者は惹かれました。しかし、他者との差別化に力点を置くデザイナーファッションは、ともすると日常的には違和感があったり、凝った作りゆえにとても高価なものでした。
そんなデザイナーズブランド疲れの空気感の中で、海外のセンスの良い、日常使いもしやすいリアルクローズを輸入し紹介したのが、当初は原宿の小さな路面店から始まったBEAMSなのです。背景としては総じて為替が円高方向であったことも、輸入ファッションや雑貨人気の後押しとなったと思います。そしてBEAMSをはじめとするセレクトショップは、自らが企画製造するオリジナル商品も着々と充実させて、日本の生活者のニーズにあった死角のない商品構成でファッションビジネスのメインストリームとなっていったのです。当たり前のリアルクローズだけではあきたらないファッション性の尖った部分は、海外の高価なインポートモノでアピールしながら、値ごろ感もあり実際に普段使いしやすいオリジナル商品も豊富にラインナップするというイノベーションがセレクトショップなのです。