若手のビジネスパーソンに気をつけていただきたいのは、ビジネスの場では、目の前の相手だけが交渉相手ではないということです。多くの場合目の前の相手は、あなたからの情報を再度、他の人間(ほとんどの場合上司)と検討するのです。
そして、あなたが必死に作り出した「お得である」という根拠の薄い「共感」は人を跨いだり、文書化されたりするととたんに説得力を失うのです。
もちろんビジネスの場では「お得」は「未知のリスク」との天秤にかけられるので最終的には決裁者の「意見」によって進むものです。しかし「事実」の分析によって避けられるリスクはできる限り避けなくてはいけません。説明する側になっても、説明を受ける側になっても常にそういったアンテナを張っていたいものです。
説得力がないことに小学生でも気づく
ちなみに、ロジムのロジカルシンキングの授業では「親にゲームを買ってもらうためのプレゼンをしてみよう」というテーマの回が一番盛り上がります。意見や都合のよい事例を普遍的な事実のように都合よく引き合いに出したり、泣きを入れるなど感情に訴えたりあの手この手を駆使します。しかし、一歩立ち止まってクラス全体で「親の立場」でそれらを検証してみようという時間になると小学生でも説得力のなさには気づくものです。
みなさんも交渉の場では「こういうストーリーなら相手は納得してもらえるだろう」というプレゼンの流れを想定すると思います。そんなときに、「相手がノーと言うとしたらどこが引っかかるだろうか?」という検証を必ず入れてみてください。思い込みや都合のよい解釈(「確証バイアス」といいます)に気づくことができ、結果的に説得力のあるものができ上がるはずですし、プレゼン中の相手の反応も理解できるようになることでしょう。
次回はこの「事実と意見を分ける」スキルの応用演習にチャレンジしてみましょう。
【今日から使えるロジカルシンキング】は子供向けにロジカルシンキングのスキルを身につける講座やワークショップを開講する学習塾「ロジム」の塾長・苅野進さんがビジネスパーソンのみなさんにロジカルシンキングの基本を伝える連載です。アーカイブはこちら