キャリア
嘆きとユーモア…平成経済を綴ったサラリーマン川柳を振り返る
一般のサラリーマンが都心にマイホームを持つのは夢物語のようで、郊外には住宅団地が次々と開発されていった。
バブル崩壊、成果主義台頭
土地取引融資にかかわる規制が2年に強化され、バブル崩壊が始まる。不動産価格は暴落し、投資資金の焦げ付きとともに景気がいっきに冷え込む。新卒採用は絞り込まれ、就職氷河期が到来、企業では人員削減が加速した。
- 「この不況 人事ばかりが やる気みせ」(信天翁 6年)
- 「少数に なって精鋭 だけが欠け」(凡夫 7年)
- 「休みくれ 永久に休めと 肩たたく」(嫌味言太 11年)
9年には山一証券が自主廃業、北海道拓殖銀行が、都市銀行として初めて破綻した。金融システム不安が高まる中、企業倒産、再編も相次いだ。
- 「行員も そっと他行へ 貯金する」(読み人知らず 9年)
- 「コストより 先に会社が ダウンをし」(福の神 10年)
- 「一生を 賭けた会社に 先立たれ」(怒りのヒラ 11年)
不良債権問題は16年ごろまで沈静化せず、「失われた10年」と呼ばれた。
活力をどうすれば取り戻せるのか。バブル崩壊の打撃を引きずる企業は、日本に根付いていた終身雇用と年功序列型賃金の見直しに踏み切る。成果主義賃金へのシフトだ。
- 「恩忘れ すぐにかみつく 部下とジョン」(貧乏くじ 7年)
- 「成果主義 成果挙げない 人が説き」(詠み人甚吉 15年)
社歴よりも、実力が社員の評価軸として一段と重視される。
IT化、上司と部下の関係に影響
リストラと歩調をあわせるように企業が急いだのが、IT化だった。1990年代後半から職場のいたるところにパソコンが導入され、サラリーマンにはITスキルが不可欠となる。
第一生命経済研究所の的場康子主席研究員は「インターネットに慣れ親しんだ若い世代と、そうでない世代ではITスキルにギャップがある。上司が部下に教えてもらう構図を生み、関係性を変える影響を与えたかもしれない」と話す。
- 「ぼくに出す メールの打ち方 聞く上司」(ホワイトエンジェル 平成10年)
- 「パスワード アスタリスク(*)を打つ上司」( 薩摩はやと 11年)
- 「ドットコム どこが混むのと 聞く上司」(ネット不安 12年)
IT音痴の上司には、職場では冷ややかな視線が向くようになった。
延びる定年、働き方改革、そしてAI…
バブル崩壊の痛手から抜け出した日本だが、いまは生産年齢人口の減少を背景とした低成長時代の真っただ中にある。リストラを懸命に進めてきた企業も、うって変わって人手不足の問題に直面。人材確保が大きな悩みとなっている。