SDGsとも密接にかかわる
宇宙産業はSDGs(持続可能な開発目標)とも密接にかかわってきます。「気候変動に具体的な対策を」や「海や陸の豊かさを守ろう」といった目標を達成するには、都市や森林、海の状況をきめ細かく把握した上でイノベーションによる対策が必要となってくるからです。
月では究極のサステナビリティが求められる環境を実現するため、再生エネルギーシステムの開発・実証拠点として利用する計画が進められています。このプロジェクトも「エネルギーをみんなに、クリーンに」というSDGsの目標とつながっています。
今後20年で2.2倍に拡大
宇宙産業の国際市場は、2040年には1兆ドル(約110兆円)に達すると予測されています。今後20年間で2.2倍の規模に成長する見通しです。
世界の宇宙ベンチャーに対する投資額も増えており、2020年には76億ドル(約8400億円)に達しています。こうした動きを裏付けるように、米国では宇宙ベンチャーが相次いで上場を果たしています。日本でも宇宙ベンチャーが大型の資金調達を相次いで発表しています。今回は地球データや月の探査・開発といった領域から5社を紹介します。
データをAIで評価、農産物の生産性向上へ
地球観測衛星データを活用した土地評価サービスを提供しているのが、JAXAスタートアップに認定されている天地人(東京都港区)です。人工衛星による各種データを最新のAI技術によって評価し、気候変動による影響を軽減することで農産物の生産性向上が可能となります。今後は農業ソリューションだけではなく不動産やインフラ、保険金融、物流といった業界で事業拡大を図ります。
データとSNSで的確な自然災害情報
衛星データのAIによる自動解析に取り組んでいるのがスペースシフト(東京都千代田区)です。地球温暖化に伴って世界各地で自然災害が深刻化しているのに対応し、データの解析情報にSNSの情報を組み合わせることで広範囲かつピンポイントな災害情報を把握できるようにしています。とくにSAR衛星のデータ解析に力を入れています。
水を推進剤とした小型エンジン
現在の衛星のほとんどにはエンジンに相当する推進機が搭載されておらず、行動が制限されています。推進機には安全性とサステナブル、低価格という条件が求められ、水を推進剤とした小型エンジンはこれら3点を満たすため、今後の衛星に必要不可欠なものとなるでしょう。同タイプのエンジンを提供しているのが東大発ベンチャーのPale Blue(千葉県柏市)です。低電力で使用でき、燃費の良さが特徴です。