デロイトトーマツベンチャーサポート(DTVS)です。当社はベンチャー企業の支援を中心に事業を展開しており、木曜日の朝7時から「Morning Pitch(モーニングピッチ)」というイベントを開催しています。毎週5社のベンチャーが大企業の新規事業担当者や投資家らを前にプレゼンテーションを行うことで、イノベーションの創出につなげるのがねらいです。残念ながら新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためオンライン開催となっていますが、いずれ会場(東京・大手町)でのライブ開催に戻す予定です。
モーニングピッチでは毎回テーマを設定しており、それに沿ったベンチャーが登場します。ピッチで取り上げたテーマと登壇ベンチャーを紹介し、日本のイノベーションに資する情報を発信する本連載。今回はファッションです。
大量生産・廃棄
ファッション業界は2つの大きな課題に直面しています。その1つが環境問題です。衣服をはじめとしたファッション関連の製品は、大量に生産されて大量に廃棄されています。リサイクルやリユースの比率は徐々に拡大していますが、大半が埋め立てや焼却によって処理されています。2つ目が人権問題です。激化するコスト競争に伴い、生産を請け負うバングラデシュやパキスタンなどの東南アジアの国では低賃金労働を強いられており、時給がたった15円というケースもあります。
若年層は「エコ」商品に関心
こうした現状が広く知られるようになり、消費者の購買意識、行動も変わりつつあります。キーワードは「サステナビリティ-(持続可能性)」です。とくにZ世代を中心とした若年層は、リユースタイプなど“エコ”な商品に対する関心度が高く、購入よりもレンタルを選択したり古着でも構わないという人が増えています。また、自分の身体的特徴をよく知った上で似合う服を選ぶ「パーソナライゼーション」もキーワードのひとつとなっており、カラー診断や骨格診断への関心も高まっています。
地中海のゴミを原料とした生地
海外のアパレルブランドでは、持続可能という観点からの商品開発が進められています。スペインのECOALFは、地中海の海洋ごみを収集してペットボトルや漁網、タイヤなどを原料としたリサイクル生地を開発し、スニーカーを生産しています。アウトドアブランドを展開する米国のPatagoniaは、ウエアをより長く着てもらえるように、修繕サービスを行っています。
フランスのエルメスは、キノコからレザーを開発する米国のスタートアップと連携して、耐久性のあるバッグを開発しました。
環境に配慮したシューズを販売する米Allbirdsは、完全に土に還すことができる植物レザーを開発した米国のスタートアップに出資し、新たな素材の実用化に取り組んでいます。
AIで流通量を調整
国内のスタートアップの間では、AIを用いて流通量をコントロールしたり、生産現場の効率化などを通じて廃棄対策を進めたりする動きが相次いでいます。
また、無駄なものを生産しないようにするには、顧客が欲しい製品を事前に聞き出すことも有効です。ByteDanceはSNSやECサイトとのデータ連携によって、顧客の興味がありそうな情報を提示するサービスを提供しています。AIを活用したコーディネート提案アプリなども注目されています。
2021年のファッション業界は、サステナブルとパーソナライゼーション、デジタライゼーション、業務効率化といった動きが加速し、ファッションを取り巻く課題の抜本的な解決策が次々に誕生する年だと確信しています。今回は、それに向けて重要な役割を果たす5社を紹介します。