【試乗インプレ】これが軽?小型車の基準すら塗り替え得る乗り心地 ホンダ・N-BOX(前編)
更新今回は、9月に発売されたばかりの新型軽自動車、ホンダ・N-BOXを取り上げる。大人気だった先代モデル譲りのトールボーイ。スペース効率がいいのは一目瞭然だが、乗ってみて驚いたのは格上の小型車がかすむほどの走行中の快適さだった。(文・写真 小島純一/産経ニュース)
無敵のトップセラー
先代N-BOXは日本で一番売れ続けていた軽自動車だったが、今回試乗した新型が発売されるや、もともと販売台数1位だったが2位以下を大きく引き離した。
全高が1.7メートルを超えるスーパーハイト系、ターボと自然吸気の2種類のエンジンにユニセックスなノーマルとマッシブなカスタムという2通りのボディーデザインで計4つのバリエーションは先代を踏襲。ボディーデザインは大きくは変わっていない。新旧並べられても多分私には区別がつかないだろう。
むしろ新型の自然吸気iVTECエンジンの採用や、衝突防止システムである「ホンダセンシング」の全車標準装備など、先代のコンセプトを保ったまま中身を進化させたモデルチェンジと言える。
前編ではその走りに、次週の後編ではデザインと使い勝手にフォーカスする。さっそく走行性能から見ていこう。
「軽としては」の前提不要
今回試乗したのは、前輪駆動で自然吸気エンジン仕様のカスタム。出発地点は東京・青山のホンダ本社の地下駐車場。車幅こそ狭いものの、自分の身長より背の高いそのボディーを間近にすると「うわ!デカっ」と率直に感じる。
メッキ加工された大きめのドアノブを握り、スマートエントリーで開錠、乗り込んでドアを閉めるとボフッと重い音がする。背が高い分ドアの鉄板の面積が大きいせいかドアにも重みがある。と同時に、ドアを閉めた瞬間に感じた鼓膜への微かな圧力から、密閉性の高さも予感させる。先代から約80キロ軽量化されているが、第一印象は重厚さだった。
エンジンをかけ、駐車場からカーブしたスロープを登って渋滞する夕方の都心を走り出す。外苑東通りから四谷三丁目を右折して新宿通り、半蔵門を左折、英国大使館から千鳥ヶ淵を抜けて大手町へ。
最初に気づくのは車内の静かさだ。信号待ちでアイドリングストップすると、遮音効果でまるで大通りに面したガラス張りのカフェの中にいるよう。走っていても、街路の流れに乗った50~60キロまでの速度であれば、エンジン音、ロードノイズ、車外の音のいずれもがきれいに遮断されていて、カーラジオの音量が小さくても声がよく聞き取れる。遮音材が効果的に配置されているのはもちろん、高いボディー剛性によって、駐車場で予感していた走行中の密閉性が保たれていることがわかる。
アイドリングストップせずに低回転のまま停車している時であっても、エンジン音は微かにしか聞こえてこず、ハンドルやフロア越しに伝わるエンジンからの振動も皆無。静粛性は2クラス上の1500ccクラスに近いレベルに達しており、もはや「軽としては」という前提は不要だ。