【試乗インプレ】我が道を行く、その心こそプレミアム 強烈な個性が魅力「DS5」(後編)
更新ドイツ車に引けをとらない走りの質感を持つDS5。その独特のスタイルを掘り下げていくと、ドイツ的な合理主義では割り切れない、強烈な個性が浮かび上がってきた。DSの考えるプレミアムの定義とはいったい何なのか。前置き少し長めですが(←いつもな)、我慢して読んでみてください。(文と写真:産経新聞Web編集室 小島純一)
高級車はセダンでなければならないのか
前回述べたとおり、DS5の車格は欧州基準のベンツ・Cクラス、BMW・3シリーズに代表されるDセグメント。ライバルの独プレミアム3強や英ジャガー、レクサスなどではオーソドックスなセダンをメインに展開しているクラスである。ハッチバックを備えるモデルもあるにはあるが、いずれもセダンをベースにした派生車種。
プレミアムブランド各社も現在はベンツ・Aクラス、BMW・1シリーズなどが属する格下のCセグメントに車種を展開し、そちらがエントリークラスになっているが、かつてはDセグが高級車オーナーの登竜門だったし、依然として「高級車はセダンでなければ」という固定観念はあると思う。
この固定観念にはちゃんと理由があって、セダンのエンジンルーム+キャビン+荷室という3ボックスの車体構成(ノッチバック)が自動車の伝統的なフォームファクターであり、前輪と後輪という騒音の元からキャビンを隔絶し、高級車に必要とされる静粛性を確保できるからである。
対してエンジンルーム+荷室と一体のキャビンという2ボックス構成(ハッチバック)は、荷室の高さが稼げて積載効率が高い反面、スタイルや快適さよりも実用性に振った「貧乏臭さ」が高級感を阻害すると認識されている面があり、見た目も設計思想的にも「粋なクルマ」と評価されづらい宿命を背負っている。
たとえば日本でも、スバル・レガシィや日産・ステージアのような垢抜けたモデルの登場までは、商用バンと似たシルエットのステーションワゴンは乗用車の一カテゴリーとしてなかなか定着しなかった。
どこにも分類できず「何だこのクルマは」
そんななか、DSはハッチバック一本で勝負に出ている。今回取り上げている5も、格下の4、3のいずれもすべてハッチバック1本勝負だ。こんなプレミアムブランドはDSだけである。そろそろ外観を見ていこう。