【試乗インプレ】街を「小さく走る」ためのRR ルノー・トゥインゴ(前編)
更新車体が小さく、小回りが利いて、燃費もいいコンパクトカー。狭い道の多い日本の道路事情にもマッチしている。価格が安いから、免許を取って初めてのマイカーが中古のコンパクトカーだったという人も多いだろう。かく言う私もその一人である。日本の独自規格である軽自動車も含めるとなると、日本ではもっともポピュラーなカテゴリーであり、さまざまな魅力を持った車種がひしめいている。そんな中から今回は、この秋日本でも販売を開始したばかりのフランス車、ルノー・トゥインゴを取り上げる。(文と写真:Web編集室 小島純一)
スマートと兄弟 エンジンは後ろに載っている
初代トゥインゴはAセグメント(最小サイズのクルマが属する欧州基準のカテゴリー)の前輪駆動車(FF)として1993年にデビュー、2代目もFFとしてモデルチェンジした。ところが今回試乗した3代目は、ダイムラーの子会社スマートとの共同開発となってプラットフォームを共有したことで、一転、車体後部にエンジンを搭載して後輪を駆動するRRへと変貌を遂げている。
RRというと、スマート以外ですぐに頭に思い浮かぶのはなんと言ってもポルシェ…というか、軽トラックのスバル・サンバーがダイハツのOEMになってRRからFR(フロントエンジン、リア駆動)に鞍替えした今となっては、もうポルシェ・911とスマートくらいしか採用していない、非常にレアな駆動方式なのだ。
前輪は操舵、後輪は駆動と役割を分け、FRには欠かせないフロントエンジンから後輪に動力を伝えるプロペラシャフトも不要なため構造がシンプル。結果、製造コストや部品点数が抑えられる一方で、重量物であるエンジンが後端近くに搭載されることで、前後の重量バランスがとりづらく、荷室スペースも確保しづらいというデメリットも持つ。
「小さく走るため」のRR
FF全盛のこの時代になぜRR?という疑問が湧くわけだが、その理由はスマートとの共同開発ということに尽きる。
スマートのコンセプトは、2人乗りで狭い街路を走りやすく、狭いスペースでも駐車しやすい、街乗りに最適化したクルマ。バイク並みの小排気量のエンジンをスクーターのように後輪のすぐそばに配置することで、衝突安全性に配慮したうえでボンネットを切り詰め全長を短く設計している。つまり「小さく作り、小さく走らせる」ためにRRが選ばれた。