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定期預金の30倍金利をGET! 狙い目の“個人向け債券”投資術

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定期預金の30倍金利をGET! 狙い目の“個人向け債券”投資術

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 2014年は債券市場に注目

 企業が個人向け債券(社債)の発行を増やしている。2013年の国内での発行額は約8兆5000億円(2013年12月13日現在。発行日ベース)。債券投資に慎重な機関投資家に代わって、個人マネーに目が向いたからだ。なかには銀行の定期預金をはるかに上回る30倍もの利率が付く社債も。銀行預金や国債よりも利回りが高く、資金運用を求める個人の投資ニーズにも合致する社債だが、2014年も続々と起債が予定されそうだ。どんな債券を選べばいいのか、プロに聞いた。

 国際優良企業が久々に個人向け社債を発行

 2013年は社債発行額が高水準で、リーマン・ショック後の起債ブームだった2009年に匹敵する高さだった。

 特徴としては、トヨタ自動車、花王、ソニーといった国際優良企業が久しぶりに起債する例が目立ったことだ。しかも個人向け社債として広く販売されるケースが多かった。

 これについてファイナンシャル・プランナーの前川貢さんは、「低金利のうちに長期資金の調達を増やしたいと考える発行体が増え、発行額も大きかったため、広く個人にも販売される結果となりました。預金や国債に比べ利率が高いため、個人も積極的に購入したようです。発行体と個人のニーズがマッチして、個人向け社債の発行額が増えたのでしょう」と分析する。

 実際、魅力的な利率のものも目立つ。ソフトバンクが6月に発行した個人向け5年債の利回りは年率1・74%(税引き前。以下同)。2010年以来の起債となったマネックス債も、1年債1・0%(3月)、6カ月債0・7%(6月)と定期預金をはるかに超える利回りだ。

 一方、年4回(四半期に1回)募集を行なっていた個人向け国債「変動10年」「固定5年」も2013年12月募集分から毎月発行となった。ちなみに、12月募集分の変動10年は年率0・43%。リスクとリターンを見ながら、個人向け債券を賢く選ぶ時代がやって来た。

 2013年は新発債が増加! なぜ今、社債が注目されているのか

 株式相場の値動きが激しい中、長期金利に対する先高観と投資家への裾野を広げたい企業の間で、個人向け社債の発行意欲が高まりつつある。一方、個人投資家は社債を選択肢のひとつと考えているようだ。運用先としての社債への関心を高めている。

 今回のブームは、既発債や借入金の借り換えが要因

 2009年以来の社債発行ブームはなぜ起こったのだろう?

 金融アナリストの久保田博幸さんは、「前回は2009-2010年に起債ブームが起こりました。このときは、金融危機による手元流動資金の逼迫が理由です。金融機関が劣後債などを発行したケースが多く見られました」と指摘。「今回はアベノミクスによる金利先高観から、企業が2009年に発行した社債を借り換える目的で起債した例も多いようです。また、低金利で長期の資金を確保できれば財務の改善にも役立ちます」(前川貢さん)というニーズがあるようだ。つまり、従来起債している債券や借入金の借り換えニーズが発行ブームとなった第一の理由というわけ。

 もちろん、景気回復に伴う資金需要もある。トヨタ自動車の場合、発行した600億円を次世代環境車の開発に振り向けるほか、花王もアジアなど世界市場の開拓に向けての攻めの投資資金として起債したという。

 もともとメンテナンスなど旺盛な資金需要があり、定期的に社債を発行している企業もある。その代表例が、東日本大震災以来起債が止まっていた電力・ガス業界。“電力債”という言葉があるほど、個人向け社債の中心的在存だ。今年になって、徐々に起債を再開したことも相対的な発行額増加に寄与した。NTTなどの通信業界、小田急電鉄、近畿日本鉄道、東武鉄道などの電鉄業界も同じ事情で常連だ。

 発行額が膨らみ、個人向けも活発化したというのが2013年の個人向け債券市場の状況だ。ただ、定期預金に比べれば利率は高いとはいえ(右下の表参照)、「2013年の発行条件は企業に有利なものでしたが、個人の運用対象としてはお勧めできるものではありませんでした」と前川さん。確かに5年で年率1%を超えている債券はほとんどないうえ、7年、10年と長期債の発行も多かった。決してもろ手を挙げて購入する条件ではなかったともいえる。

 ほかの金融商品とはどう違う? 個人向け社債の賢い買い方、選び方

 安全商品のイメージが強い個人向け社債だが、過去には元本が個人投資家に戻らなかった事例もある。金利先高観のある今、購入時に注意すべき点がいくつかあるので押さえておこう。

 購入時のポイントは信用格付けと運用期間

 そうはいっても、銀行の定期預金に比べれば、債券を組み入れることで、運用利回りは多少高くなる。現在のCPI(消費者物価指数)上昇率が0・8%程度なので、年率0・1%のネット銀行の定期預金1年物を組み入れても、預貯金だけでは資産が完全に目減りしてしまうことがわかる。だが、個人向け社債なら、発行体によっては年率1%超のものもあるので、ポートフォリオに組み入れていくのは賢い選択肢ということになる。

 しかし、「1%を超えているからといって、油断は禁物」と忠告するのは前川さん。「金利先高観がある中で、たとえ利率が1%超でも、それが10年債ならば、手を出すべきではない」とも指摘する。

 個人が社債を購入するときは、償還まで持つのが基本だ。債券は発行体が利子や額面金額の支払いをあらかじめ約束している商品。償還まで持てば、定期的に利子を受け取り、償還時には額面金額を受け取れる。しかし、途中で売却しようとすると、流動性が低く結局は証券会社に買い取ってもらうことになる場合が多い。そうなると、元本割れする可能性が高い。そもそも債券は、市場金利が上昇すれば価格が下落し、金利が低下すれば価格は上昇する。現在のように金利先高観が出ているタイミングでは途中売却すると、元本割れしてしまうわけだ。

 また、金利先高観という面で見れば、10年債など中長期債を購入すると、途中で金利が上昇し、償還まで利率の変わらない社債を持っていると不利になる可能性もある。「せいぜい期間が2?3年程度の社債を保有するのが賢明」と前川さん。一方、「発行体の信用リスクを見るのも基本」とは久保田さん。

 社債は償還まで保有すれば額面金額が返ってくるが、発行体が破綻してしまったら、元本が戻らない可能性がある。「過去にマイカル、武富士などが破綻した際、個人投資家にも被害がおよびました」(久保田さん)

 信用リスクは格付けを見るのが基本。B格だとNGとは一概に言えないが、短期債で持つほうが無難だ。

 特に格下げされた場合などは、元本が戻らないリスクが高まったという認識を持つ必要がある。

 2014年はどう動く? 最新!債券発行の動向と利率の状況

 発行額は多かったが、利率の低かった2013年の社債発行状況。これに対し、2014年は発行件数がさらに増えるうえに、利率条件も個人投資家に有利に働きそうだ!

 景気回復で金利先高観。社債の利率は上昇へ!

 2013年は、社債の発行額は多かったが利率が低すぎて、個人投資家に有利とはいえなかった。2014年の個人向け社債の発行額と利率動向はどうなるのだろうか?

 2013年は、株高・円安と市況は順調だったが、量的金融緩和を背景に超低金利が持続。企業にとっては歴史的な低利率で社債を発行できた。しかし、2014年は株高警戒感がある一方、景気回復を背景にいよいよ市場金利は上昇傾向に転じるとみられる。

 だからこそ、「2014年は狙い目の年」と前川さんは強調する。「個人向け国債の『変動10年』12月募集分の金利は年率0・43%(税引き前)。これでは個人投資家に見向きもされない。しかし、いったん市場金利が上昇し始めると変動型の利率はすぐに反応し、あっという間に0・8%、1%と上がっていくでしょう。そうなると、“購入してもいいかな?と思う投資家が一気に増えます。個人向け国債が人気になると、国債よりリスクの高い社債はその上をいく利率をつける必要が出てくるのです。このタイミングは重要。個人投資家にとっては、願ってもない投資タイミングがやって来ます」(前川さん)

 発行体として多いのは、金融機関、メーカー、商社など。電力・ガス、通信、電鉄などのインフラ産業も一定の起債ニーズがある。なかでも、金融機関は2008年のリーマン・ショック時に劣後債を多く発行。その借り換えのために、債券発行が必要なので、2013年は海外での発行を増やしたとみられる。

 しかし、海外での金融緩和が一段落すると、低金利での調達が難しくなる。金利が上昇する前に国内での起債に駆け込んできそうだ。新規投資や大型の企業買収でメーカーも資金需要は旺盛。企業側の起債ニーズが高いとなると、2014年は債券市場から目が離せない状況だ。(ネットマネー)

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