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ワクワク感が消えた日本の家電 シーテックなぜ活気失ったのか
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シーテック出展企業と入場者数 日本最大のIT・家電見本市「CEATEC JAPAN(シーテックジャパン)」の来場者、参加企業が激減している。10月5日まで開催された今年の来場者数は過去最低を記録。米アップル、韓国サムスン電子など世界的なデジタル・IT企業は参加せず、会場で話題を集めたのは家電メーカーではなく、自動車メーカーという体たらく。米国で開かれる同様の見本市には世界中の最先端企業が集まり、熱気であふれかえるだけに、シーテックの惨状はニッポン家電の象徴でもある。
「行列に並ぶことなくランチを食べることができるなんて…」
10月1日。千葉・幕張のシーテック会場を訪れた関西系電機メーカーの担当者は、開催初日とは思えない人の少なさに驚いた。
会期中(10月1日から5日)の来場者数は14万1348人。過去最低の数字となり、ピーク時(平成19年20万5859人)に比べ3割以上も減少した。
出展企業も587社と19年の895社から減少傾向が続いており、なかでも海外企業は20カ国348社から18カ国163社へと激減している。デジタル家電分野で世界を席巻するサムスン電子、LGエレクトロニクスといった韓国勢をはじめ、中国、台湾の有力企業は不参加。IT・家電見本市といっても家電色が濃いため、米アップルや米グーグルなど米IT大手も参加していない。
海外の有名企業の出展が少なければ来場者が少ないのも当然だが、「会場内の展示物にワクワク、ドキドキすることもなく、回を重ねるごとにつまらなくなっている」(業界関係者)という。
『テレビがもたらす感動の原点』-。こんなキャッチフレーズが大型テレビの画面に浮かび上がり、大音量の音楽をバックに、女性ダンサー2人が華麗なダンスを披露する。「REGZA」ブランドを冠した東芝の4Kテレビのプロモーションだ。
今年のシーテックで家電各社が繰り広げたのはテレビなどの「画質競争」。ソニーが有機ELディスプレーを採用した4Kテレビを国内初公開したほか、パナソニックも4Kテレビのほか、法人向けの20インチ4Kタブレットなど「4K」に絞った商品を展示。シャープはフルハイビジョンの規格でありながら、輝度を調整して「4K並み」の画質を保つ技術をPRした。
ただ、こうした画質競争は、技術が追いつかれては価格の低下を招く、日本の家電メーカーが陥ってきた悪循環の入り口でもある。
また、4Kテレビの“展示ラッシュ”は、1月に米ラスベガスで開催された世界最大のIT・家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)で見られた光景で目新しさはない。
「シーテックでは去年も4Kが話題だった。今年も4Kかとがっかりする。画質もそれほど上がったようには見えない。参加企業の力不足が、シーテック自体のアピール力不足につながっている」
著書「ネットテレビの衝撃 -20XX年のテレビビジネス」で知られる情報通信総合研究所の志村一隆・主任研究員は、シーテックの現状をこう解説する。
しかも、今年のシーテックで来場者の話題をさらったのは家電ではなく、自動車。近年、自動車は「テレマティクス」と呼ばれるIT化が進み、シーテックにも自動車大手が相次ぎ参加している。
昨年からは会場内に乗用車の試乗エリアが設けられるようになり、まるで「モーターショー」。特に今年は「自動運転技術」が話題を呼び、日産自動車の同技術は海外のジャーナリストがすぐれた技術を選ぶ「米国メディアパネル・イノベーションアワード 2013」のグランプリを、自動車として初めて受賞したほどだ。
シーテックの不人気はIT・家電業界の現状を表しているわけではない。毎年1月に米ラスベガスで開催されるCESには、世界中の有力企業が参加し、最先端のIT・デジタル家電技術を披露。会期中、CESの会場内はあふれんばかりの来場者で埋め尽くされ、熱気に包まれる。つまり、シーテックの不振は日本特有の問題というわけだ。
志村氏は「シーテックは新製品発表の場でなく、参加会員企業による惰性になってしまっている」と厳しく指摘する。その上で、シーテックについては「日本発としての場を残しておくことは必要だ。『ニンジャイノベーション』と言って表に現れない動きから革新が起きることもある。CESで小さなブースで出展していたマイクロソフトは今や巨大企業に成長した」と話す。
ニッポン家電の不振を象徴する見本市となってしまったシーテック。再び来場者であふれ、活気を取り戻す日は来るのか…。(織田淳嗣)