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ダンスカンパニー「DAZZLE」 幻想世界へ誘う 妖しさと力強さ

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ダンスカンパニー「DAZZLE」 幻想世界へ誘う 妖しさと力強さ

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鼓童の野外イベント「アース・セレブレーション」のリハーサルで、鼓童と最終調整を行うDAZZLE=2014年8月24日、新潟県佐渡市小木町の城山公園(田中幸美撮影)  漆黒の森の奧から白い和傘を手にした白装束の一団がしずしずとステージ上に現れた。顔にはキツネ面。次の瞬間、和傘が幾何学模様を描くようにかなりのスピードで動き始め、傘を支える手と身体がしなやかに舞った。妖しい音楽に、抑制を効かせた太鼓がかぶさる。ついさっきまで太鼓の音に合わせて激しく身体を揺らしていた聴衆も目の前に突如広がった幻想的な光景に目を奪われていた。

 古い日本映画を思わせる舞台設定で独自の世界を披露したのは、ダンス界で異彩を放つダンスカンパニー「DAZZLE(ダズル)」。先月(8月)24日、新潟県佐渡市を拠点に活動する芸能集団「鼓童」の野外イベント「アース・セレブレーション」にゲスト出演。妖しい美しさで観客を魅了した。

 ダンサーでDAZZLEを主宰する長谷川達也さん(37)は、「僕たちの舞台にはダークな世界観がある。それが野外で生の太鼓の勢いを感じながら踊ると、作品の持つ幻想的な雰囲気に力強さが加わった」と話す。ダンサーで脚本を手掛ける飯塚浩一郎さん(36)も「大地の力を感じさせる太鼓の音によって自分の中の“野生・本能的な部分”が刺激された」と手応えを強調した。

 鼓童との共演は、先に出演が決まっていたパフォーマンス集団「BLUE TOKYO(ブルー トーキョー)」の振り付けを長谷川さんが手掛けることがきっかけで実現。しかし、鼓童との出会いが、DAZZLEにとって画期的で新たな道を切り開く出来事にもなった。

 2012年5月から鼓童の芸術監督を務める人間国宝の歌舞伎役者、坂東玉三郎さん(64)の目にとまったのだ。どういう楽曲で参加するか打ち合わせる過程でDAZZLEの作品を見てもらったところ、玉三郎さんはいっぺんで気に入ったという。

 「日本でこのようなパフォーマンスが存在しているなんて素晴らしい出来事。日本の未来に向かう新しい表現の誕生」と最大の賛辞を贈った。

 この出会いがきっかけとなり来年3月、玉三郎さんの演出でダンス公演を行うことが決定した。クラシックの曲に合わせて踊る作品になるという。

 ≪たどり着いた「舞台」 輝き放つ≫

 DAZZLEは長谷川さんが大学2年のとき、ダンスサークルの仲間5人で始めた。キャリア18年で、現在は9人からなる。最初は他のダンサーと同じように、コンテストで優勝を目指すダンスチームだった。

 大学卒業後の2001年、日本最大のストリートダンスのコンテスト「第8回ジャパン・ダンス・ディライト」で2位に入賞した。長谷川さんは「今でも負けたとは思っていない」と振り返る。ワイルドでファンキーさを身上とするストリートダンスの世界で、当時すでにダークなテイストを漂わせたDAZZLEは異色の存在だった。

 入賞によってダンススクールの講師や人気アーティストのバックダンサーの仕事も舞い込んだ。だが、SMAPのバックで踊っても満員の観客は誰一人自分に見向きもしない。むなしさを感じた。「ダンサーが輝けるのは自分たちで作品を作って、ステージで踊る瞬間しかない」。たどり着いた結論は舞台だった。

 一方、大学入学以来、ダンスにのめり込んだ飯塚さんは、大学1年のとき、全国の大学のダンスサークルが集まる発表会で、当時すでにダンス界では有名だった長谷川さんの振り付けで踊った。「(長谷川さんは)憧れの存在だった」という。

 それから5年、2人は再会。2006年、大手広告代理店でクリエーティブの仕事をしていた飯塚さんの参加によって、物作りのノウハウがDAZZLEに注入され、ステージを作り上げる試みが軌道に乗り始めた。

 この頃の合言葉は「10年後は東京国際フォーラムで」「いつかは海外公演を」。転機となったのは、舞台3年目の09年に初演した「花ト囮(おとり)」。上演した池袋シアターグリーンで開催された演劇祭で、ダンス作品でありながらグランプリを受賞したのだ。

 「僕たちは演劇の世界で評価を受けるのかもしれない」。その後、芸術見本市で作品をプレゼンテーションしたところ、海外の演劇祭などへの道が開けた。世界三大演劇祭の一つ「シビウ国際演劇祭」(11年・ルーマニア)ではスタンディングオベーションを巻き起こし、中東最大の演劇祭「ファジル国際演劇祭」(12年・イラン)では「花ト囮」が審査員特別賞と舞台美術賞の2冠を達成した。

 そして、今月(9月)6、7日には合言葉だった東京国際フォーラムの単独公演を行う。ストリートダンスとしては異例のことだ。演目は、再演を重ねる度に進化する「花ト囮」。黒澤明監督の「夢」からインスピレーションを得たこの作品は、キツネの嫁入りを目撃した兄弟が迷宮へとさまよい込む幻想的なストーリー仕立て。障子や唐傘などの日本的な道具がダンスと絡み合いパズルのように繰り出される。

 「見てもらえれば伝える自信がある」と長谷川さん。日本人の心の琴線に触れる美しく妖しいパフォーマンスは、見る者をとりこにする。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■DAZZLEの「花ト囮」 東京都千代田区丸の内3の5の1「東京国際フォーラム ホールC」で2014年9月6日(土)は午後2時からと午後6時からの2回、7日(日)は午後0時30分から上演。チケットは4800~8800円。問い合わせは、キョードー東京(電)0570・550・799まで。

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