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ダンスでの表現、大切にしたい オリジナルミュージカル「ifi」 蘭寿とむさんインタビュー
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少し伸びた髪が中性的でアンビバレントな魅力を引き立てる。「女優としてやってみたい役ですか?_まだ具体的なビジョンはまだ…今回、その手がかりをつかめたら」と語る、舞台女優の蘭寿(らんじゅ)とむさん=2014年8月15日、東京都内(寺河内美奈撮影) ファン約8000人に見送られ、蘭寿とむ(39)が緑袴姿で宝塚トップを卒業したのは5月。直後はカフェでぼんやりしたり、予定に縛られず思いつきでその日の行動を決めることが、何よりの息抜きになったという。「(宝塚時代は)とにかく走り続けてきたので。私にとっては何もしないというのが一番のぜいたくでした」
だが「1カ月もたつと身体を動かしたくなった」。この根っからの舞台人が9月5日から、オリジナル・ダンスミュージカル「ifi(イフアイ)」(作・演出、小林香)で男役から女優への新たな一歩を踏み出す。
宝塚時代はダンディーで鳴らした蘭寿だが、本作では女性映画監督ユーリに。「男性とお芝居したり歌ったり踊ったりするのは初めて。実際にリフトして肩にひょいと乗せてもらったときに『いいんですかぁ』って(笑)。すごく新鮮でした」
「ifi」は人生の岐路における「選択」がテーマ。ユーリは恋人ヒロ(ジュリアン、黒川拓哉のバージョン別キャスト)を失ったとたん人生に迷い、占い依存症に。占星術師の案内で別の人生を選び直せる摩訶(まか)不思議な異世界「ifi」におちていく。ユーリがめぐる異世界は、ベニスの仮面舞踏会、ブラジルのラテン音楽の世界、米のキャバレーテイストの世界…と複数あり、蘭寿のさまざまな歌やダンスが味わえる。何より、「踊ることが本当に好き。表現ではダンスを大切にしたい」との蘭寿の思いをかなえようと、世界中からさまざまなジャンルのトップダンサーが集結した。
アッシャー、マドンナら一線のアーティストの舞台で踊ったケント・モリ、シルク・ドゥ・ソレイユで活躍するダンサー辻本知彦、斬新でパワフルなダンスで人気のラスタ・トーマスら異なる身体言語を持つダンサーらと1つの物語を紡ぎあげる。
「みなさんが素晴らしいので、稽古場で毎日、食い入るように見ています。それぞれの世界観で私も踊る、その経験は代えがたい。男役では使わなかった筋肉を使うのか、身体がびっくりしています」。動きの端々に時折、ダンディーな“前世”のクセが出てしまうというが、「強い、パンチのきいたシーンもあるので、そこで生かしていきたい」。
女性として歌い、演じることは、戸惑いよりも「うわー楽しい!」というのが大きい。「男役時代は、自分の中に沸き上がってきた感情を、いったん男性の感覚になって受け止め、包んであげるような気持ちに変換して演じていました。でも今は、沸き上がったままストレートに気持ちを出せばいいので」
ボイストレーニングの先生からは「裏声もけっこう高いところが出るじゃない」と言われた。「もっと勉強したらいろんな声が出るんじゃないか」と知的な興奮が高まり、最近は「朝目覚めるのが楽しみだというまさかの現象が起きているんです(笑)。ファンのみなさんにも新鮮な姿を見ていただけると思います」(文:津川綾子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)