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【ベネッセ情報漏洩】派遣の男立件へ 動機解明・拡散ルートなど焦点

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【ベネッセ情報漏洩】派遣の男立件へ 動機解明・拡散ルートなど焦点

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ベネッセコーポレーション東京本部のビル=2014年7月14日、東京都多摩市(小野淳一撮影)  通信教育大手「ベネッセコーポレーション」から顧客情報が大量に流出した問題で、顧客情報のデータベース(DB)を管理する下請け業者でシステムエンジニア(SE)として勤務する派遣社員の男が流出に関与した疑いが強まり、警視庁生活経済課が不正競争防止法違反(営業秘密複製、開示)容疑で立件する方針を固めたことが7月14日、捜査関係者への取材で分かった。SEのIDで顧客情報がコピーされており、任意の事情聴取に持ち出したことを認めたという。

 ベネッセ関係者によると、DBの保守・管理を担当するグループのIT関連会社「シンフォーム」(岡山市)の東京支社(東京都多摩市)で昨年(2013年)末、このSEの男のIDが使われ、顧客情報が複数回コピーされた痕跡がパソコン(PC)に残っていた。SEが支社に出入りした記録もあった。

 支社からPCを持ち出すことは禁じられていたが、USBメモリーなどの記録媒体を接続することは可能で、隠し持っていた記録媒体に顧客情報をコピーして盗み出したとみられる。その後、複数の名簿業者を経て、IT事業者のジャストシステム(徳島市)に販売された。

 生活経済課は下請け業者からも事情聴取し、顧客情報がコピーされた時間帯と、SEの勤務状況などとの照合を進める。ベネッセ側には、情報の管理体制や下請け業者のアクセス権限の範囲などについて説明を求めているという。

 ベネッセによると、流出が確認された顧客情報は約760万件で、最大約2070万件に上る可能性があり、全てのDBの調査に乗り出している。

 ≪動機解明・拡散ルートなど焦点≫

 ベネッセコーポレーションの顧客情報流出問題は、DBを管理していた下請け業者の派遣社員が顧客情報の持ち出しを認めたことで新たな局面を迎えた。DBからコピーされた履歴など派遣社員の関与を疑わせる「証拠」は残されており、警視庁の捜査は動機の解明や共犯者の有無、名簿業者を通じた拡散ルートの特定などが焦点となる。

 第三者関与か

 ベネッセの内部調査で、昨年末に関連会社「シンフォーム」が保守・管理するDBからSEのIDで、顧客情報が複数回コピーされた痕跡を発見した。シンフォームの東京支社で、ベネッセから貸与されたPCが使われていたことも分かっている。

 DBに接続できる部屋は立ち入りが厳しく制限され、DBの管理業務に携わる技術者らに個別にIDやパスワードが振り分けられており、ベネッセ関係者は「本人になりすまして出入りすることは不可能に近い」と説明する。問題のSEのIDでの入退室記録も残されていた。

 ただ、捜査関係者は「IDは記録上の痕跡にすぎない。悪意ある第三者がSEのIDを盗み出し、無断で使った可能性をつぶすのは捜査の基本」と指摘。警視庁生活経済課は、DBのコピー履歴や支社の入退室記録を照合するほか、SEの供述との整合性について裏付けを進める。

 SEが共犯者の指示を受け、顧客情報を持ち出した疑いも残されている。一般的に派遣社員のSEが名簿業者との間に売買ルートを築いているとは考えにくく、捜査関係者は「ブローカーなどが介在し、高額な買い取り価格を提示してそそのかした可能性も捨てきれない」という。生活経済課は、SEの交友関係などの洗い出しを進め、不審な人物との接触などがないかも調べる。

 業者に刑事罰も

 一方、情報の拡散ルートについて、東京都内の名簿業者は「素人のSEが業者に持ち込んでも門前払いにされるのが普通で、警察に通報される可能性もある」と首をかしげる。

 ベネッセ関係者によると、顧客情報は今年1月ごろには、東京都武蔵野市の名簿業者「パン・ワールド」が入手。福生市の名簿業者「文献社」を通じ、5月にIT大手のジャストシステムに約260万件分が転売された。パン社は「他の業者から買った」と説明している。

 顧客情報は、このルート以外にも流れていた。別の名簿業者は4月ごろ、800万件分の子供のデータを入手したが、ベネッセからの流出を疑わせる架空の名前が記載されており、転売を見送った。一方で、「何社にも転売した」とする業者もいるという。

 不正流出した顧客情報を売買したパン社や文献社、ジャスト社は法的責任を問われないのか。警視庁の事情聴取に、3社とも「ベネッセの顧客情報と知らなかった」と違法性の認識を否定する一方、文献社とジャスト社は出所不明なまま売買したことを認めているという。営業秘密を入手した業者として重大な過失が認められれば、賠償責任を問われる可能性がある。

 また流出元から直接入手した業者は刑事罰に問うことも可能で警視庁が特定を急いでいる。(SANKEI EXPRESS

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