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【まぜこぜエクスプレス】Vol.6 自由な表現 「生の芸術」に希望 六本木で震災テーマのアート展

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【まぜこぜエクスプレス】Vol.6 自由な表現 「生の芸術」に希望 六本木で震災テーマのアート展

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アート展「つながる_それから?」の打合せをする(左から)絵本作家のスギヤマカナヨ、東ちづる、美術家の中津川浩章、BEMSクリエイティブディレクターの窪浩志、PR-y主宰クリエイティヴディレクターの笠谷圭見=2014年4月24日(山下元気さん撮影、一般社団法人「Get_in_touch」提供)  東日本大震災をテーマにした作品や被災地で活動するアーティストの作品を中心にしたアート展「つながる。それから?」が、東京都港区の六本木ヒルズUMUで5月10、11日の2日間開かれる。主催する一般社団法人「Get in touch」の理事長・東ちづるが、アート展に託す思いを語った。

 新しい支援のアイデア

 「被災したことがだんだん忘れられてしまっている」「復興にはまだ程遠いのに」「原発事故も収束していないのに」

 被災した友人、知人はさみしそうに、半ばあきらめたように言う。確かに東京に住んでいると、3年前の東日本大震災のことを語る機会は少なくなってきた。被災地の様子が報道番組などのマスメディアで取り上げられる機会も大きく減っている。そこで「Get in touch」では、東北に再び心を寄せてもらうため、被災地のアーティストを中心に紹介する「アール・ブリュット」展を企画した。アール・ブリュットとは、自由な表現による「生の芸術」を意味する言葉だ。

 今回は絵画だけでなく、アール・ブリュットをデザインに取り入れたファッションアイテムの展示なども行う。また、ゲストに漫画家のやくみつるさんやイラストレーターの326(みつる)さん、「こびとづかん」作者のなばたとしたかさんらを迎え、アール・ブリュットを通して人と人をつないだり、新しい商品を展開するなどさまざまなアイデアを提案するトークショーも企画した。アートの可能性を模索する試みだ。

 再び描き始める

 宮城県で知的障がい者の自立支援を行う社会福祉法人「仙台市手をつなぐ育成会」の事業所「こぶし」は震災で大きな被害を受け、仙台市長町庁舎内の拠点を失った。震災の日は、真っ暗な中でガタガタ震えながら皆で抱き合って一晩を過ごしたという。こぶしに通うアーティスト、塗敦子さんの作品もほとんどが泥に埋もれてしまった。

 こぶしは震災後長く仮拠点での活動を強いられてきたが、2013年に新しい施設を開所した。もちろん塗さんもそこで描き続けている。モノクロの写真をちらちらと見ながら、時に鼻歌を歌いながら、伸びやかな線を幾重にも重ね、迷うことなく色を配置していく。まるで最初から彼女の頭の中には完成した絵があったかのように。そして、両手で絵を掲げ「できたー!」と誇らしげにかわいい声をあげる。すると同じ部屋にいる人たちは「あっちゃん、できたー!」と拍手するのだ。そこに流れる柔らかい空気は、作品からも伝わってくる。

 岩手県在住の水沼久直さんも震災で伯母や伯父、親しい人たちとの悲痛な別れを経験した。以来、繰り返し津波の光景、阪神大震災や雲仙普賢岳の噴火などの大災害の光景を描いてきたが、やがて再生を表現した作品「かんぜんなふっかつのつなみ」を制作した。

 同じく岩手県在住の田崎飛鳥さんも震災で激しく人生を揺さぶられた。震災後しばらくは筆を取ることができなかったが、現在は被災した建物に花を添えた作品に取り組んだり、「ふくろう」の絵を描いて家族を亡くした人にプレゼントする活動を行っている。

 理不尽な悲しい出来事、そこからの新たなスタート、そして再生。彼らの作品は希望と未来を信じる力の大切さを教えてくれているように思う。一般社団法人「Get in touch」理事長 東ちづる/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■アート展「つながる。それから?」

<主催>一般社団法人Get in touch。<運営>Get in touch2014「アート展」実行委員会。<日時>5月10、11日の午前11時~午後9時。<会場>六本木ヒルズの多目的スペースUMU。<後援>テレビ朝日福祉文化事業団(予定)

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