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古墳で街を活性化 ~堺の取り組み~(上) 世界遺産登録へ 市民と行政一体

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古墳で街を活性化 ~堺の取り組み~(上) 世界遺産登録へ 市民と行政一体

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堺市が世界遺産登録を目指している「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」の仁徳天皇陵=2012(平成24)年8月27日、大阪府堺市(恵守乾撮影)  【Campus新聞】

 日本最大の前方後円墳で、墓の面積としても世界最大とされる「仁徳天皇陵」がある大阪府堺市が、古墳という歴史遺産で街を活性化しようという取り組みを進めているという。関西大学社会学部の学生記者たちが、古代と現代をつなぐ古墳とともに歩む堺を取材した。

 □今週のリポーター 関西大学 有志学生記者

 大阪府の中南部に位置する堺市は、人口およそ84万人の政令指定都市だ。全国的には工業都市として知られているが、古い歴史を持つ街でもある。中世には海外との交易で栄え、古代には「仁徳天皇陵」を含む「百舌鳥・古市古墳群」が作られた。1500年の時を超え、いまなお人々とともにある古墳に注目した。

 当たり前の存在「再認識」

 実は近畿2府4県のなかで大阪府にだけ世界遺産がない。そこで候補に挙がったのが、堺市、藤井寺市、羽曳野市(はびきのし)にまたがる「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」だ。2010年にユネスコ世界遺産暫定一覧表に記載され、現在は推薦待ちという状況だ。

 その古墳群の中でも、堺市には、誰もが歴史で習った前方後円墳で日本最大の大きさを誇る「仁徳天皇陵」(別名・大仙(だいせん)古墳)がある。今、堺市では、古墳という歴史遺産を街の活性化に役立てようとする動きが広がっている。堺市民にとって、古墳は昔から変わらずにある当たり前の存在だ。その当たり前の存在に目を向け、街の活性化に取り組む人たちが堺市にはたくさんいる。古墳周辺の清掃活動を行ったり、古墳関連商品を開発したり、市民が自主的に行動を始めた。

 市民を動かしているのは、世界遺産に登録されれば、地域活性化に直結するからという理由だけではない。登録を目指すというきっかけを通じて、自分たちの住む街の魅力に改めて気づき、その素晴らしさを感じて「地元愛」が育まれたからだ。

 行政だけでなく、市民も一体となって行われている古墳を活用した街づくりを取材することにした。

 「百舌鳥・古市古墳群」を世界遺産とするべく奮闘しているのが、堺市文化観光局世界遺産推進室主幹の上田一也さんだ。現在は堺市民の機運をさらに高める活動を中心に行っている。

 ミーティング、清掃…

 百舌鳥・古市古墳群が堺市にあり、世界遺産登録を目指していることを知らない市民はまだまだ多いという。「登録には、市民や府民にとどまらず、全国民の『世界遺産にするぞ!』という機運を高める必要がある」と、上田さんは語る。

 まずは市民に世界遺産登録に向けた活動について知ってもらい、応援してもらえるようにすることと、大阪府民の6割に「百舌鳥・古市古墳群」を知ってもらうことを目標にしている。

 市民の理解を深めてもらうため、昨年(2013(平成25)年)6月には「世界遺産ミーティング」を開催。市民からは、古墳周辺の清掃活動の推進といった意見が出され、上田さんは、市民の意識の高まりを実感したという。

 実際、市民の自主的な活動も活発になってきているという。多くの市民団体が清掃活動を行っており、市の職員も年2回ボランティアとして市民とともに清掃活動に参加している。市民と行政が一体になって取り組む態勢が整い、着実に世界遺産登録に向けて前進している。

 世界遺産に登録されれば、堺市は良くも悪くも大きく変わる。観光客の増加は、街の活性化につながる一方で、古墳群は市民の生活エリアにあり、交通渋滞などの問題が起きる心配がある。「市民にとってマイナスを上回るプラスにしなければならない」と、上田さんは言う。

 地元を誇り、愛する多くの市民が世界遺産登録を応援している。「市民のためにも、登録を実現して、街の活性化につなげたい。市民も府民もみんな一緒に取り組み、古墳群を世界遺産にすることが使命」と、上田さんは熱く語った。(今週のリポーター:関西大学 有志学生記者/SANKEI EXPRESS

関西大学 有志学生記者

<取材・記事・写真> 齋藤奈月、福井俊弥、山村周平、塩見明菜

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