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【鋤田正義 meets 黒木渚】写真が切り取った一瞬に全てが映っている

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【鋤田正義 meets 黒木渚】写真が切り取った一瞬に全てが映っている

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バンド「黒木渚」のギターボーカル、黒木渚さん=2013年11月30日(鋤田正義さん撮影)  2013年11月30日、この日は黒木渚全国ワンマンツアーの最終日だった。場所は東京都台東区の東京キネマ倶楽部。グランドキャバレーを改装して作られたライブハウスであり、ステージから壁紙、装飾までオペラハウスを思わせるようなクラシカルな雰囲気だ。

 「ショーを作る」

 ツアーファイナルは集大成でなくてはならない。キネマ倶楽部の下見に来た時から、ここでクライマックスを迎える姿を思い描きながら準備してきた。

 キネマ倶楽部は、劇場自体が独特の世界観を持っている。えんじ色の上品なステージ幕、別ステージから本ステージへ伸びる美しい螺旋(らせん)階段を見ながら思った。「曲の発表会ではダメ、ショーを作らなければ」

 当日の朝、会場入りするとそこには既にカメラを構えた鋤田さんの姿があった。本番の時間に合わせて撮影にいらっしゃるとばかり思っていたが、まさかのスタッフと同時に会場入りである。開演まであと8時間もある。

 照明が組まれ、そこに機材が搬入されサウンドチェックが行われる。メンバーがステージに立ち、リハーサルが始まる様子を鋤田さんはずっと撮っていた。今回、ライブの演出として早着替えを行う予定だったので、その練習も入念に行われた。衣装とメークを替え、別ステージに登場するまでを2分間で行う。メークさん、スタイリストさんが裏で待機し、ステージから下がって来る私を待ち構える。正に時間との勝負だ。

 会場に流れるジムノペディが終わると同時に、別ステージがスポットライトで照らされ、青いドレスに着替えた私が立っているという流れである。

 流れる青いドレス

 リハーサルが終わり、衣装を着たままの私が鋤田さんの所に行くと「すてきな青だね」と褒めてくれた。「フレアが揺れてすごくいい。さっき水を飲んでいたけど、ドレスも水みたいに流れて動くからすごくきれい」と。

 鋤田さんの写真には、モノクロでも色彩が映るし、音も映っているのだと以前書いたが、動きも映るのだ。静止画なのに。青いドレスがまるで身体の表面を流れる水みたいに動くさまが映っている。

 そして、この写真を見ていると、この日のライブに関わった全ての人に感謝しなくてはと改めて思う。足元に敷かれた絨毯(じゅうたん)は、いつも裸足で歌う私がけがをしないようにローディーさんが準備してくれたものだ。アンプの上に置かれたペットボトルは蓋に穴が空けられストローが刺されている。曲間に素早くのどを潤すためにスタッフが工夫してくれた。横に置いてあるピンク色の水筒には、常備しているお湯が入っていて、それはきちんと私好みの温度で用意されている。私を照らすライトも、歌いやすいように緻密に調整されたモニターも、ドレスもメークも、1回のライブを作るためにたくさんの人間がチームを組み、力を合わせた結果だ。

 そして何より前方に映るお客さんの姿。手を高く挙げステージに拍手を送ってくれている。面と向かった私は何と幸せそうな顔をしているんだろう。当たり前だ、こんなにたくさんの人が一緒にライブを作ってくれるんだから。

 写真が切り取った一瞬の中に、黒木渚の全てが映っている。(文:バンド「黒木渚」のギターボーカル 黒木渚/撮影:写真家 鋤田(すきた)正義/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■すきた・まさよし 1938年、福岡県生まれ。広告、音楽、映画などの仕事で今日に至る。近作は、忌野清志郎写真集『SOUL』(2012年)、デヴィッド・ボウイ写真集『BOWIE×SUKITA Speed of Life』(2012年)、THE SHOOT MUST GO ON 写真家鋤田正義自らを語る』(2013年)など。http://sukita.jp/

 ■くろき・なぎさ 九州出身の音楽アーティスト。昨年(2013年)3月にリリースされた1st mini album「黒キ渚」が第6回CDショップ大賞にノミネート。「SUMMER SONIC 2013」や「COUNTDOWN JAPAN 13/14」などの大型フェスにも出演。

HP:www.kurokinagisa.jp

 【ライブ】

 6月1日(日)渋谷公会堂ワンマンライブ

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