SankeiBiz for mobile

鮮度に自信 完全養殖マグロ 東京 近畿大学水産研究所銀座店

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのトレンド

鮮度に自信 完全養殖マグロ 東京 近畿大学水産研究所銀座店

更新

看板メニュー「近大マグロと選抜鮮魚のお造り盛り」。かたわらには、生年月日やどこで飼育され、どんなエサで育ったかなどがQRコードでたどれる「卒業証書」が添付されている(田中幸美撮影)  【食を楽しむ】

 昨年(2013年)12月4日、東京・銀座のコリドー街に長い行列ができた。「近大マグロ」でおなじみの近畿大学(本部・大阪府東大阪市)の養殖魚専門料理店「近畿大学水産研究所銀座店」がオープンしたのだ。4月に大阪・梅田の複合施設「グランフロント大阪」(大阪市北区)にオープンした1号店は、9カ月たった今も長蛇の列が絶えない人気店。勢いにのった近大マグロは瞬く間に東京進出を果たした。

 近大マグロとは、近畿大学が世界で初めて2002年に成功した「完全養殖」技術で生産したクロマグロ(本マグロ)のこと。近大では、ほかにもマダイやカンパチ、シマアジなど17種類の魚を完全養殖で生産する。

 銀座店では、ランチタイムに「近大マグロと選抜鮮魚のお刺身ご膳」(2400円)や「近大マグロと選抜鮮魚の海鮮丼」(1800円)など3メニュー計150食を提供。選抜鮮魚は日替わりで、マダイ、シマアジ、ヒラメ、カンパチなどが並ぶ。一番人気は海鮮丼で、多い日には80食が出る。

 夜は単品中心で、「近大マグロとアボカドのタルタル最中」(680円)や「自家製ツナのマカロニサラダ」(600円)が女性に人気という。男性には店のお薦めでもある「近大マグロと選抜鮮魚のお造り盛り」(2800~4300円)が人気だ。

 早朝解体、当日提供

 また実学教育の一環として、食品栄養学科の学生が宴会コースの鍋料理を考案したり、芸術学科の学生が焼いた大皿を使うなどの工夫もしている。

 銀座店で提供するマグロは週に2、3回、1回につき原則1本を奄美大島の実験場(鹿児島県瀬戸内町)から取り寄せる。朝、釣り上げて鹿児島空港まで船で運び、冷凍ではなく冷蔵の状態でいったん置く。そして、空路東京へと運び、築地市場で2日ほど保管して、店で出す日の朝、解体する。マグロは2、3日おかないと旨味が出て食べ頃にならないためだ。

 近畿大学ベンチャービジネス推進事業本部の石原克人さんによると、大阪店で提供するマグロは、串本の実験場(和歌山県)のもので、奄美のマグロに比べ若干脂がのっている。関東は、トロはもちろんのこと赤身も好む傾向があることなどから奄美のマグロを使っているという。マグロ以外の魚は、活魚を入れた水槽車で築地まで週3回運んで、早朝解体したものをその日に店で提供。そのため「鮮度には絶対の自信がある」という。

 マグロは1本40~80キロと大きさに幅があり、60~70キロが大半。中には100キロ台という特大サイズもあるという。マグロは食べ頃になるまでには3、4年かかる。近大マグロは半分以上が中トロ、30%が赤身で、残りが大トロという構成だ。

 安心・安全を訴えて

 一般的な養殖は天然の稚魚を捕獲して育てる。近大では30年以上にわたる研究の結果、人工孵化した稚魚を成魚になるまで育てて、親となった成魚から採卵して人工孵化させ次世代を生み出す「完全養殖」の技術を確立。これだと、天然資源にほとんど頼ることなく供給できる。さらに、餌の配合によって量や味を変えられるという。

 しかし、日本では長いこと天然を養殖の上と見る「天然信仰」があった。宮下盛(しげる)近畿大学水産研究所長(70)によると、30年以上前は、質のよい餌もなく、魚が病気になると魚用の水産薬を使うなどしたため、悪いイメージが定着。安全に育てられる技術を確立し、そうした問題が改善された今も悪しきイメージが抜けきらないという。宮下所長は「安心・安全を消費者に訴えて養殖業界を活性化するのが一番の目的です」と話している。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■近畿大学水産研究所銀座店 東京都中央区銀座6の2東京高速道路山下ビル2階(銀座コリドー通り)。(電)03・6228・5863。営業時間はランチが午前11時30分~午後2時(ラストオーダーは午後2時だが、食材がなくなり次第終了)、ディナーは午後5時~11時(ラストオーダーは午後10時)。無休。

ランキング