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情報戦熾烈 出荷PCに細工 米の中国監視網、ネット非接続も破る

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情報戦熾烈 出荷PCに細工 米の中国監視網、ネット非接続も破る

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 米国家安全保障局(NSA)が2008年から、海外約10万台のコンピューターについて、旧来型の情報監視用ソフトの埋め込みに加え、出荷時、関連部品などに潜ませた超小型無線機で情報監視していたことが1月16日までに分かった。ネットに接続していないコンピューターの情報収集も可能となっており、こうした事例の発覚は初めてとみられる。米国にサイバー攻撃を行った中国軍への監視と対抗が最大の目的とされるが、ロシア軍や欧州連合(EU)の貿易関連機関などのコンピューターも監視していたうえ、遠隔操作でウイルスを送り込むサイバー攻撃を実行する能力も持つとあって、世界に衝撃が広がっている。

 暴露文書で明らかに

 1月15日付の米紙ニューヨーク・タイムズが、複数の匿名筋の情報や米中央情報局(CIA)元職員、エドワード・スノーデン容疑者(30)が暴露したNSA関連文書などを元に報じた。それによると、今回明らかになった情報監視活動は「クアンタム」との暗号名で呼ばれている。最大の注目点は、コンピューターの出荷時に、製造元の関係者や工作員らが、狙ったコンピューターの内部にある電子部品を固定するプリント基板やUSBケーブルの接続部分に超小型無線機を直接埋め込むアナログな手法だ。

 NSAの工作員らは、この無線機が飛ばすターゲットのコンピューターのデータを「ナイトスタンド」と呼ばれるノートパソコンと一体化したブリーフケース大の小型中継機器で収集。そのデータを本国のNSA本部に送信する。

 「ナイトスタンド」は最大13キロ先にある標的のコンピューターにアクセスでき、情報の収集や監視を行う。また、プリント基板やUSBケーブルに埋め込まれた超小型無線機を介して、標的のコンピューターにマルウエアと呼ばれる遠隔操作ウイルスを埋め込む。約10万台のコンピューターのほとんどは、ネットワークを介して遠隔操作ウイルスを埋め込まれたが、ネットに接続されていないコンピューターにはこの新手法が使われた。

 中国軍やロシア軍などのほか、メキシコの警察当局と麻薬組織、サウジアラビアやインド、パキスタンといった対テロ戦争での協力国にもしばしば利用されたという。

 企業スパイは否定

 欧米メディアはニューヨーク・タイムズ紙を引用しながら、この新技術について「サイバー攻撃を防ぐ堅固な守りを、大昔のラジオ電波を使った技術で破った」と驚きを持って報道。AP通信は、ネット非接続のコンピューターに対しても、2012年6月、米国とイスラエルが共同実施したイランの核施設へのサイバー攻撃のような大規模攻撃が可能になると警告した。

 一方、NSAの広報担当バニー・バインズ氏は、今回の報道について「われわれが他国の諜報機関の調査のために用いる技術や装備を公にする行為は、米国とその同盟国の安全にとって有害である」と説明。「われわれの行動はすべて他国の諜報機関が対象で、他国の企業へのスパイ活動など、米国企業の国際競争力強化のために使ったりはしていない」と弁明した。

 確かに、NSAの情報監視活動は恐ろしいが、もっと恐ろしいのは、米国に敵対心を燃やす中国が、自国製のパソコンなどで同様の細工を行い、情報監視や報復を試みることだろう。昨年(2013年)7月27日付の豪紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビューによると、英米豪など5カ国の情報機関は、すでに中国メーカー、レノボ(聯想)製パソコンの使用を禁止している。「仁義なきサイバー戦」に終わりはない。(SANKEI EXPRESS

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