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【躍動する大地ジオパーク】(2)室戸・島原半島・糸魚川 自然の恵み体感
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室戸半島は海と陸が出合って新しい大地が誕生する最前線=2012年5月3日、高知県室戸市(室戸ジオパーク提供) 全国に33あるジオパークの中でも注目すべき活動をしているのが、室戸ジオパーク(高知県室戸市)、島原半島ジオパーク(長崎県島原市、雲仙市、南島原市)、糸魚川ジオパーク(新潟県糸魚川市)の3つの世界ジオパークだ。
見どころをめぐるジオツアーが定期的に開かれるほか、ジオという地域の宝を理解する住民らによる自発的な活動が見られるからだ。
高知県室戸市のほぼ全域にわたる室戸ジオパークは、室戸半島の海岸から急に立ち上がる崖と縞模様の切り立った岩が特徴的。現在に至るまで巨大地震による大地の隆起が繰り返し起こって半島が形成された。しかし、その光景が強烈なことから「室戸ジオ=隆起した岩」と思われがち。そこで「大地の成り立ちと人々の関わりを伝えたい」と、地域住民の主導で「ジオツーリズム推進チーム」を発足させた。
ジオツアーは、行政と旅行社が細かいコースやガイドを決めるのが一般的だが、推進チームの住民らが全てを決めたジオツアーを昨年(2013年)11月に初めて開催。半島の水深が急に深くなる地形的な特徴を生かした定置網漁をテーマに、漁師から話を聞いたり、取れた魚を食べたりした。
さらにガイドとは別に、ジオを生かした地域の取り組みを立案する約70人の「ジオパークマスター」が活動する。室戸ジオパークの柴田伊廣(ただひろ)地質専門員(32)は、「住民に組織を変えようとする力がある。今後の課題はビジネスを強調しすぎずに経済活動をすること」と話す。
また、1991年、大規模火砕流によって多くの人が犠牲になった雲仙普賢岳を擁する島原半島ジオパークは、火山と人間の共生をテーマにする。普賢岳は「雲仙大変肥後迷惑」と語り継がれる江戸寛政年間の噴火など過去に計3回の大噴火を起こした。にもかかわらず、人々が島原半島に住み続けるのはなぜか。ジオツアーでは、火山との闘いだけでなく、島原手延べそうめんをはじめとする特産品や温泉、湧水などの火山の恵みを紹介し、ツアー参加者にその答えを探してもらう工夫をしている。島原ジオパークの大野希一(まれかず)地質専門員(44)は、「島原半島だけの問題ではなく、これだけ自然災害の多い日本に日本人が住み続ける理由の発見にもつながる」と話す。
糸魚川ジオパークは、日本のジオパークの先駆者としてジオパーク活動を牽引してきた。ここは、日本海側から太平洋にかけて帯状に存在する「フォッサマグナ」(ラテン語で「大きな溝」)西端の活断層「糸魚川-静岡構造線」が有名。フォッサマグナミュージアム館長補佐の竹之内耕さん(51)によると、この構造線は「単に地質だけでなく日本の東西文化の境界線にもなっている」という。確かに一帯は電源周波数の東西の境界にあたる。
さらに5億年前のヒスイをはじめさまざまな石を見ることができる。糸魚川地域は、世界ジオパーク設立以前の1987年からこうした「地域の宝」に着目。大地の生い立ちをモチーフに地域おこしを手がけてきた。竹之内さんは「長い下積みがあってできたこと」と話す。
火山や地震など大地の躍動を体感できるばかりでなく、そこに住む人たちとの関わりや防災にまで広げて楽しむことができるジオパークで、ジオ体験をしてみてはいかがだろうか。(田中幸美(さちみ)/SANKEI EXPRESS)