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今年は何聴く? 注目アーティスト(5) チャラン・ポ・ランタン ハードル高く、常に挑戦

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今年は何聴く? 注目アーティスト(5) チャラン・ポ・ランタン ハードル高く、常に挑戦

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シュールで魅力的な世界を展開する姉妹ユニット「チャラン・ポ・ランタン」の2人。左からボーカルのもも、アコーディオンの小春=東京都新宿区歌舞伎町のゴールデン街「ソワレ」(岡崎健志さん撮影、提供写真)  ヨーロッパのジプシーかキャバレーか、はたまた昭和歌謡か。特異なキャラクターとストーリー性の高い歌によって、じわじわとその名を広めてきているのが、アコーディオンの小春(25)とボーカルのもも(20)の姉妹ユニットのチャラン・ポ・ランタンだ。

 転機は「フジロック」

 そもそも小春は東京都が認定するヘブンアーティストとして10代から路上やイベントなどいたるところで演奏してきた。ヘブンアーティストとは大道芸人のこと。「なりゆき」でふたりの実家においてチャラン・ポ・ランタンは結成。2009年のことだ。以降、都内のライブハウスを中心に活動を続けてきた。

 「毎年のように、『今年ブレークするアーティスト』みたいなイベントに出演してきたんですよね。一緒に出ていた人はどんどん先に行くんだけど、うちらはいつも同じ状態で、あれれ、みたいな(笑)」と小春。

 自分たちのペースで、といっても週に3本なんてのは当たり前というハイペースでステージに立っていたふたり。大きな変化のきっかけとなったのが、2012年の『フジロック』への出演だったのかもしれない。その年のヘッドライナーであるRADIOHEADと同時刻に行われたチャラン・ポ・ランタンのショーを、その年の『フジロック』のベストアクトと称する人も少なくない。その年の秋に2年ぶりにアルバム『つがいの歯車』を発表。そしてももが20歳になる13年4月までに3枚のアルバムをリリースするという公約をし、見事にそれを成し遂げた。アルバム制作と並行して「今年こそブレークしたくて2013」と銘打ったライブシリーズを敢行。ファンを獲得していった。

 ひとつのライブを濃く

 「前は、今日も明日も明後日もライブというように、鬼のようにステージに上がっていたんです。ひとつのことを練り直す時間もないまま毎日が過ぎていって、いつの間にか1年たっちゃうみたいな。新曲もそれほど作られるわけでもなく、今あるもので楽しく毎日がやれればいいなっていう状態だったんです。月に1回の企画ライブをすることによって、ひとつに絞れるようになったんですよね」(小春)

 「ひとつのライブの濃さというか、私たちひとりひとりに求められている要求が高くなって、それに応えていかなきゃならないっていう使命感みたいなものが生まれたのかもしれないですね。ツイッターなどで新しいお客さんに見てもらえているという実感も芽生えてきて」(もも)

 傷つくくらいじゃないと

 昨年3月にはアメリカのテキサス州で行われる世界的なフェス『サウスバイ・サウスウェスト』に出演。現地メディアでは「オルタナティブ・シャンソン」と称賛された。そして結成5年となる2014年。今年こそ彼女たちがブレークすることは間違いない。

 「今年もさらに自分たちの首を締めていきたいですね。ライブでは『まじでここまでやるの?』みたいな。自分たちが傷つくくらいじゃないと、お客さんの心には何も残らないと思うんです。自分に対してのハードルを高くしていきます」(小春)

 「今の自分に満足したくないですね。いろいろ新しい場所でライブをすることになるんでしょうけど、常に新しいものに挑戦していきたいです」(もも)

 言葉にすると、ライブよりもショーに近いチャラン・ポ・ランタンのステージ。歌があり演奏があり、アイロニーたっぷりのトークがある。唯一無二のシュールな世界が、そこで展開されている。チャラン・ポ・ランタンの世界に足を踏み入れると、なかなか抜け出せない。あなたも、今年その魅惑な世界を味わってみませんか。。(フリーペーパー「Lj」編集長 菊地崇(たかし)/SANKEI EXPRESS

 ■きくち・たかし フリーペーパーLj編集長。年間、内外20近くのフェスに足を運ぶフェスの達人。著書にアメリカのバンドPHISHを追いかけた『自由って何だ?』がある。

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