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日本最高レベルのキャンプイン・フェス It’s a beautiful day Camp in 朝霧JAM
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今年6月、「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」の名で世界文化遺産に登録された富士山。この富士山の裾野の朝霧高原で、〈朝霧JAM〉は行われている。正式名称は〈It’s a beautiful day Camp in 朝霧JAM〉。まだフェスにキャンプインスタイルで参加することが定着していない2001年に立ち上がり、今年で13回目の開催を迎えた。
かつては開催時期が9月であったり10月後半であったりと変わっていたが、現在では10月第2週の週末に定着。月曜が体育の日ということもあって、オーバーナイトして2泊ゆっくり〈朝霧ジャム〉を楽しむキャンプファンも増えてきた。開催直前まで出演するバンドは発表されない。それでもチケットはソールドアウトになってしまう。「誰を見る」ことではなく、富士山の裾野の朝霧へ行って、キャンプイン・フェスを楽しむことが、もっともプライオリティーが高い。〈朝霧JAM〉は、タイトルにある通りほとんどの人がキャンプインで過ごす。ステージのある会場からはバスになってしまうが、近くのキャンプ場はオートキャンプのエリアとして用意されている。
「今年の〈朝霧JAM〉は最高!」。そんな声が、会場にいるとよく聞こえてきた。日中は気温が25度を超え、半袖のTシャツでも快適。日が暮れると一気に冷え込むのだけど、それでもフリース程度で問題ない。雲もほとんどないから、いつでも雄大な富士山が目の前にそびえている。夜空には満天の星。標高が800メートルを超える朝霧高原は、この時季には富士山の初冠雪の便りがあるものの、今年は朝霧JAMの開催までになかった。地球環境を考えると、こうも暖かいと疑念を抱いてしまうのだが、数日だけ野外で過ごすのなら、暖かくて快適なほうがいいに決まっている。
そんな「最高」の気候のなか、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団、ザ・ストライプス、エイジアン・ダブ・ファウンデイション、cero、マーラ・イン・キューバ・ライブ、チャラン・ポ・ランタン、クラムボン、TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA、ザ・トロージャンズ、ハンガイ、KINGDOM☆AFROCKSなど、20を超える国内外のバンドが集結した。
メーンのレインボウステージに立つと、踊るオーディエンスの向こうにカラフルなテントが並ぶキャンプサイトが広がり、さらにその向こうには富士山がそびえる風景を見ることができる。そこで演奏することが、気持ちいいのだろう。ライブハウスやホールの演奏とは違う、「開放感」がどのバンドの音からも聞こえてくる。
多種多様な音を奏でるバンドたち。ザ・トロージャンズは、ロンドンのスカバンドだし、ハンガイは中国の内モンゴルの出身だ。まだメンバーが10代のザ・ストライプスからは、ビートルズやヤードバーズなど、ブルースをバックボーンにした1960年代のロックが聞こえてくる。土曜夜のヘッドライナーだったエイジアン・ダブ・ファウンデイションは、ダブを基調にしつつレゲエからドラムンベースまで幅広い音楽性を内包させつつ「踊り」というテンションにそこにいるすべての人を持ち上げていく。
富士山の懐のなかで、世界の音楽を楽しむ。そしてキャンプという土の上に寝る行為によって地球と会話する。1万1000人の参加者みんなが心のどこかでつながる感覚を得ることができるのも〈朝霧JAM〉の大きな魅力だ。富士山という絶好のロケーションのもとで行われる、日本最高レベルのキャンプイン・フェス。それが〈朝霧JAM〉だ。
今年の僕は、月曜の昼近くまで会場にいた。テントを片付け、それぞれの自分の場所へ戻っていく〈朝霧JAM〉の参加者たち。見知らぬ人とも別れ言葉を交わす。その言葉は決まって「来年もここで」だった。(フリーパーパー「Lj」編集長 菊地崇/SANKEI EXPRESS)