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壮絶な人生の中にも幸せがある 映画「樹海のふたり」 遠藤久美子さんインタビュー
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女優の遠藤久美子(35)が「樹海のふたり」(山口秀矢監督)で、自閉症の息子を持つ母親の役を好演している。「何度か母親を演じたことはありますが、障害を持つ子の親は初めての経験でした。壮絶な人生の中にある喜びや幸せを感じ取ってもらえればうれしい」と期待を語った。
自殺志願者を取材したテレビディレクターたちの体験談をベースに、ドキュメンタリー畑出身の山口監督が脚本を執筆した。主演はお笑いコンビ、インパルスの2人。落ちこぼれテレビディレクターの竹内(板倉俊之)と阿部(堤下敦)は、視聴率をとるため富士山麓の樹海で自殺しようとする人々を追う。番組は好評を得るが、2人はやがて視聴率と良心との板挟みになり…。
遠藤の役どころは竹内の妻。独身で子供もない遠藤にはイメージしにくい役だったが、ドキュメンタリーを得意とする山口監督は「そのままでいてください」と助け舟を出した。演技する空間で流れる空気を大切にしてほしいから、変に飾ってほしくなかったという。
実際に演技に臨むと、不安はたちまち解消された。難病の息子を演じた武井証(あかし、15)は撮影前に山口監督からマンツーマンで特訓を受けており、役をほぼ自分のものにしていた。遠藤は「衝撃的でした。彼の役作り、集中力に導いてもらった。彼についていけば自然と母親として心もかき乱されるし、どう演じるべきかをも考えさせてくれる」と脱帽した。
意外にも遠藤が「本格的に役者として頑張ろう」と演技の勉強に取り組み始めたのは、わずか2年前だ。芸能のフィールドでキャリアを重ねてくると、自分に求められる役どころも広くなった。「映画や舞台を見たお客さんが『見てよかった』と思える女優になりたい」。演技の勉強に目覚めたのは、心機一転の気持ちからだった。
日々の修業では、「脚本を読んで感じた第一印象を大切にし、一つ一つセリフの意味を考え、自分のものとして体になじむまで何度もセリフを読むこと」を徹底させたうえで、撮影現場では監督がどんな空気感を欲しがっているのかを感じ取ることを心掛けているそうだ。
さて、テレビも活躍の場としてきた遠藤にとって、厳しい視聴率競争や奇をてらった企画は無縁ではない。遠藤は「生半可な気持ちではテレビ番組を作れないですよね。映画に置き換えて考えると、チケットを買ってくれる大勢のお客さんが頭に浮かぶから…」と語った。7月6日から、東京・渋谷のユーロスペースほかで全国順次公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:伴龍二/SANKEI EXPRESS)