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学長から学生へ 感動伝えたい 自然の「影」 機上で撮影

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学長から学生へ 感動伝えたい 自然の「影」 機上で撮影

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早朝の相模湾上空から望遠で撮影。朝日を浴びた富士山の黒い影が本栖湖(もとすこ)に伸びていた=2011年12月13日(唐木英明さん撮影)  食の安全に関する専門家として知られる倉敷芸術科学大学の唐木英明学長(71)。学生と交流するために始めたフェイスブックに月に数回、飛行機から撮った写真をアップしている。その理由を「写真は表現の手段であり、カメラという機械が記録した対象の“影”を、如何にして自分のイメージに近づけるかが私の課題。そのためにトリミングや色・陰影の修整など、可能な手法はすべて使う。写真は自然に対する私の感動を再現したもので、それを学生に伝えたかった」と説明する。

 相模湾上空から撮った富士山の写真は、噴火口のくぼみもくっきり見え、頂上付近の雪の白さがまぶしい。

 これだけの美しい写真が撮れるのは、「今日は富士山を撮る」と決め、万全の準備をして飛行機に乗るためだ。

 「いい写真のために準備ができるのは8割まで。残り2割は天候や季節など偶然に左右されることが大きい」と唐木学長。

 もちろん飛行機に乗るのは仕事のための移動で、写真を撮ることが目的ではない。出張が多いとはいえ、飛行機からいい写真が撮れる機会はそれほど多くない。

 いい写真を撮るためには、まず翼の前の窓際の席を確保すること。翼の後ろはジェット気流で空気が揺れ、きれいな景色が見えないためだ。国内線だとプレミアムシートが多いが、エコノミーでも一番前なら大丈夫なことが多い。もし前が空いていなければ、ジェット気流の影響の少ない一番後ろの席でもいいそうだ。

 ≪「山の向こうは…」 準備万端で臨む≫

 飛行機に乗る前には航空会社のホームページでどの便に乗ればどんな景色が見えるのかを確認。乗る時間から被写体と太陽の位置を考え、右側か左側かを決める念の入れようだ。

 普段使っているカメラはニコンのコンパクトデジタルカメラ、クールピクスS9500。これぞという写真を撮りたいときは一眼レフのニコンD5000を持ち込む。

 撮るときにレンズを窓ガラスにぴたりとくっつけてしまうと振動が伝わるのできれいに撮れない。ガラスからちょっと離し、なるべく早いシャッターで切るのがコツだ。

 国内線は行き先によって飛行ルートが違う。富士山撮影のお勧めは「東京(羽田空港)-金沢(小松空港)」。金沢から東京に向かう便は、左に座ると日本アルプスと富士山の両方が見えてお気に入りだ。

 山の写真が多いのは、山が好きだから。3歳から9歳まで山に囲まれた長野・伊那谷で育ち、「山の向こうはどうなってるのかな」といつも思っていたという。そんな子供時代の自分を飛行機の上から探しているのかもしれない。(文:平沢裕子(ゆうこ)/撮影:倉敷芸術科学大学学長 唐木英明/SANKEI EXPRESS

 ■からき・ひであき 1941年、東京都生まれ。71歳。獣医師、農学者(獣医薬理学)。東大名誉教授。2011年から倉敷芸術科学大学学長。公益財団法人「食の安全・安心財団」理事長も務める。著書に『牛肉安全宣言』など。

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