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進化するインフルエンザワクチン 大和田潔

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの科学

進化するインフルエンザワクチン 大和田潔

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 【青信号で今週も】

 インフルエンザワクチン接種がピークを迎えつつあります。日本ではインフルエンザワクチンは皮下に注射するタイプが主流です。このワクチンは、不活化ワクチンと呼ばれウイルスをバラバラに破壊して定量化して水溶液にしたものです。「米でインフル流行 30年ぶり新ワクチン」(2013年2月4日付フジサンケイビジネスアイ)に新しいインフルエンザワクチンの動向が掲載されていました。

 皮下に不活化ワクチンを打つ方法は、生きたウイルスがのどで増殖する状態とは環境が異なります。免疫の活性化も部分的なものとなり、有効率の上昇には限界がありました。そこで、何とか生きたウイルスをのどに感染させて免疫を高める方法が模索されました。良いアイデアなのですが、通常のインフルエンザウイルスをのどや鼻に接種すると、本当のインフルエンザ感染症になってしまうので工夫が必要でした。

 そこで、人間の体温では増えにくく弱毒性であるインフルエンザウイルスが開発されました。このインフルエンザウイルスは、体温より低い25度で増殖します。毎年流行するインフルエンザウイルスは表面の形がそれぞれ異なります。低い温度で増殖するウイルスを元に、表面はその年の流行の形に加工するという手法がとられました。表面の形はその年のウイルスの形をとりながら体温では増えづらい、生きたウイルスを作ることができました。生きたウイルスを含むワクチンを生ワクチンと呼びます。

 生ワクチンを鼻にスプレーすると、通常通り粘膜にインフルエンザウイルス感染が起きます。感染しても弱毒ウイルスなので心配ありません。私たちの体は通常のインフルエンザ感染と同等の免疫システムを発動します。免疫システムが十分に活性化してくると、増殖できない少数のウイルスを簡単に排除します。

 点鼻タイプの生ワクチンは、海外ですでに広く使われ始めています。点鼻なので、痛くありません。生ワクチンなので免疫不全がある場合、感染症に進展する危険があり注意が必要です。日本でも認可されることになれば、このタイプのワクチンが主流になっていくかもしれません。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS

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