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【取材最前線】まだ見ぬシリアの地

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【取材最前線】まだ見ぬシリアの地

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シリア・首都ダマスカス  英BBC(電子版)などによると、シリア内戦では10万人以上が死亡し、海外に220万人が避難したといわれる。当然のことだが、かつてシリアの国民は、少なくとも表面上は平穏な暮らしを享受していた。

 「(シリアの)ダマスカスまで行ってみようか」

 米国が開戦に踏み切ったイラクでの戦争を取材するため、首都バグダッドを訪れた2003年4月。帰路の車の中で先輩記者が冗談めかして言った。

 たまたまシリアの査証(ビザ)は入手していたのだが、慣れない戦争取材で疲れ果てていたこともあり、結局は陸路で隣国ヨルダンに出た。

 ダマスカスはメソポタミアとエジプトという二大文明の発祥の地に挟まれ、紀元前11世紀から発展を遂げてきたとされる。そんな歴史的都市を見てみたいという誘惑にかられたことを思い出す。当時はシリアでこれほどの惨禍が広がるとは、もちろん夢にも思わなかった。

 2010年末、チュニジア中部で起きた若者の焼身自殺を機に、中東・北アフリカ圏で吹き荒れた民主化要求運動「アラブの春」では、モスクワ支局に勤務していた筆者も取材に駆り出された。

 11年には、公の場から姿を消したリビアの最高指導者カダフィ大佐(のちに死亡)や、国連での地位格上げを狙うパレスチナ自治政府の動きを伝えるため、カイロやヨルダン川西岸の都市ラマラなどを訪れた。しかし、このときもシリアに行く機会はなかった。

 内戦が始まってから2年半以上が経過したシリア。深刻な飢えが人々を襲い、栄養失調に加えて餓死する子供も増えているという。ダマスカスの難民キャンプでは、イスラム教で禁じられている犬や猫を食することを認めるファトワ(宗教裁定)が出されたとのニュースも流れた。

 いまこの瞬間にも緊張状態を強いられている人々のことを思うと、やりきれない気持ちになる。(外信部 佐藤貴生/SANKEI EXPRESS

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