英BBC(電子版)などによると、シリア内戦では10万人以上が死亡し、海外に220万人が避難したといわれる。当然のことだが、かつてシリアの国民は、少なくとも表面上は平穏な暮らしを享受していた。
「(シリアの)ダマスカスまで行ってみようか」
米国が開戦に踏み切ったイラクでの戦争を取材するため、首都バグダッドを訪れた2003年4月。帰路の車の中で先輩記者が冗談めかして言った。
たまたまシリアの査証(ビザ)は入手していたのだが、慣れない戦争取材で疲れ果てていたこともあり、結局は陸路で隣国ヨルダンに出た。
ダマスカスはメソポタミアとエジプトという二大文明の発祥の地に挟まれ、紀元前11世紀から発展を遂げてきたとされる。そんな歴史的都市を見てみたいという誘惑にかられたことを思い出す。当時はシリアでこれほどの惨禍が広がるとは、もちろん夢にも思わなかった。