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演じていたとき自分は何を考えていたのかな アシュトン・カッチャー 映画「Steve Jobs」

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演じていたとき自分は何を考えていたのかな アシュトン・カッチャー 映画「Steve Jobs」

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 米Forbes誌が選ぶ「テレビ界で最も稼いでいる俳優」(2012年6月~13年6月)に2年連続で1位に輝いたばかりのアシュトン・カッチャー(35)。伝記映画でも、自分と似たような一代で巨額の富を築いた男を演じてみせた。その人物はタイトル名ともなった、米アップルのカリスマ創業者、スティーブ・ジョブズ(1955~2011年)だ。

 大学を中退後、無為の日々を送っていたジョブズは、親友のスティーブ・ウォズニアックの趣味だったコンピューター製作に魅せられ、自宅ガレージを改造し「アップルコンピュータ」を設立。ジョブズは経営者として辣腕(らつわん)をふるい、1977年に発売した「Apple II」は大ヒットした。だが、25歳の若さで成功したジョブズは、独創的ながらも強引な手法に反発する周囲との軋轢(あつれき)に苦しむ。

 射抜くように見る

 本作を見る者は、カッチャーがジョブズの顔ばかりか、立ち居振る舞い、表情にいたるまで、いかに酷似しているかに驚くだろう。SANKEI EXPRESSのメール取材に応じたカッチャーは、生前にジョブズの身近にいた大勢の関係者に取材を重ね、誰もが口をそろえて言った特徴を自分の演技の中に取り込んだそうだ。

 「それはジョブズは人を射抜くように見つめるということだった。ただじっと座り、何も言わずに、それもかなり長い時間ずっと。ほとんど相手に居心地を悪くさせるくらいまでね」

 考えてみれば、相手から面白い発想や意見を引き出すのに、なかなかうまいやり方だと感じた。「(社内で権限を持つ)ジョブズは少し不満であるかのように誰か部下を凝視する。見つめられた方は、普段の5倍は一生懸命努力するんだよ。すると、ジョブズが知らないこと、予想さえしないことを話してしまうこともあるんだ。情報をたたき出すという感じかな」。ちなみに、ジョブズは聞きたかった情報を聞き出したら、そこで凝視をストップするらしい。凝視は、あくまで焦燥感をあおり、心を操作するだけのものだからだ。

 5%の否定論拠

 スクリーンに映った自身を見て、つくづく考えたのは、ジョブズに似ているとか、似ていないといったレベルの話ではなかったようだ。「関心があるのは、演じていたとき自分は何を考えていたのかなということですよ。『ワオ! あれを演じながら、何を考えていて、あんな表情になったのかな』。そんな感じです」。そもそも、撮影後に作品は自分の頭の中でこうなるだろうと思っても、編集やクリエーティブなプロセスを経るから、まったく違ったイメージのものができてしまうことは珍しいことではないという。

 凡人には想像もつかない出来事と言ってしまえばそれまでだが、ジョブズが娘の認知を拒否した場面も印象的だ。「ジョブズはあの時点で子供を持つことは、とても不便に感じたのでしょう」。カッチャーはあっさりと答えた後、こんな見立てを披露した。「合理的な疑問が生じたとき、僕たちはクレイジーなことを説得されることがありますよ。例えば、あの当時、『妊娠テストは世界でもっとも正確なものじゃなかった』というのがジョブズの合理的な疑問だった。その期間、子供ができたガールフレンドは誰かと付き合っていたと信じる理由があったんだ。ジョブズにすれば、5%の否定論拠があれば、『自分は父親ではない』と説得するのに十分だったんだ」。10月1日から全国公開。(高橋天地(たかくに)/SANKEI EXPRESS

 ■Ashton Kutcher 1978年2月7日、アイオワ州生まれ。大学在学中にスカウトされ、モデルデビュー。俳優、プロデューサーとしても活躍。98年のコメディードラマ「ザット’70sショー」で人気を得る。主な映画出演作は、2008年「ベガスの恋に勝つルール」、10年「バレンタインデー」「キス&キル」など。ツイッターで1350万人のフォロワーを獲得。

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