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モルディブ 今や中国が命綱 ヒト・モノ押し寄せる

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モルディブ 今や中国が命綱 ヒト・モノ押し寄せる

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 【国際情勢分析】

 世界的リゾートで、新婚旅行先としても人気のインド洋の島嶼(とうしょ)国モルディブで、中国人旅行者や中国産輸入品が急増している。シーレーン(海上交通路)の要衝として安全保障面での結び付きも深まっており、1000を超す島々から成る「海の楽園」に中国の存在が着実に浸透している。

 「今は中国なしでは食べていけない」。モルディブの首都マレの国際空港があるフルレ島。空港から車で10分ほどのフルマレ地区でゲストハウス(民宿)を経営する地元の男性が語った。

 旅行者はマレ国際空港に到着後、国内線や船に乗り換え、それぞれ離島のリゾートホテルに移動する。乗り継ぎが間に合わず到着当日に移動できない場合、フルマレ地区に1泊するため、中国人団体客は民宿の貴重な収入源になっている。

 民宿経営者は「客室の電化製品など備品を持っていくマナーの悪い中国人もいるけど、お客さんだからね」と苦笑する。

 2008年にモルディブを訪れた中国人旅行者は約4万人だったが、年々増えて12年には5倍超の約23万人に。今や諸外国の中で最も多い約25%のシェアを占める。中国からの直行便は現在、週25便に上る。

 モルディブ観光をPRする政府公社のモハメド・アダム社長代行は「かつて主流だった欧州の旅行者がリーマン・ショックで減った後、中国市場に積極的に売り込んだ成果だ」と胸を張った。

 流入しているのはヒトだけではない。島国で輸入に頼るモルディブには、繊維や鉄鋼製品から電化製品、携帯電話まで中国産製品の輸入が増加。02年の輸入総額は300万ドル(約3億円)だったが、11年には6900万ドルに達した。

 マレの輸入商社「ビスタ・カンパニー」のムーサ・ラシード社長は「この10年間で中国はアクセスしやすくなり、英語を話す輸出業者も増えた。何より価格が安いのが魅力だ」と指摘する。

 ビスタ・カンパニーは、建築工事の足場用の鉄パイプなどを中国から輸入。かつて主要な輸入先だったインドよりも2割ほど安く、ラシード社長は年2回、中国での貿易フェアなどに足を運んで商談をまとめてくるという。

 対印関係は冷却化

 中国は近年、中東などに至る原油の輸送路にあるインド洋周辺国との関係を重視。その国々をつないで「真珠の首飾り」戦略ともいわれる。

 歴史的、地政学的に地域の大国インドの強い影響下にあるモルディブに対しては、国レベルで「猛アプローチ」(モルディブの地元記者)をかけている。

 11年にはマレに中国大使館を設立。中国、モルディブ両政府は昨年12月、軍事協力を強化する協定に署名し、今年6~7月には中国海軍の病院船がマレや離島で住民の診察を行った。

 一方で、モルディブ政府は昨年11月にマレ国際空港の運営を委託していたインド企業との契約を破棄し、両国の関係はその後冷却化している。

 インド洋地域の情勢に詳しい海洋政策研究財団の長尾賢研究員は「シーレーン上の拠点を確保したい中国と、安定した観光収入源を得たいモルディブの関係は、さらに強まることが予想される」と指摘する。(マレ 共同/SANKEI EXPRESS

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