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マリア安らかに 悼む鈴鹿 急逝の女性元テストドライバーへ決勝前に黙とう

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マリア安らかに 悼む鈴鹿 急逝の女性元テストドライバーへ決勝前に黙とう

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 自動車レースの最高峰、F1の元テストドライバーで、モータースポーツ界における女性選手のパイオニア的存在だったスペインのマリア・デビリョタさん(33)が10月11日、滞在先のスペイン南部セビリアのホテルで死亡しているのが発見された。地元の警察当局が明らかにした。デビリョタさんは昨年7月、英国でのテスト走行中に衝突事故を起こし、右目を失明するなど瀕死の重傷を負っており、この時の後遺症が死因とみられる。突然の訃報にファンやF1関係者は悲嘆に暮れ、13日、三重・鈴鹿サーキットで行われたF1日本グランプリの決勝レース前には1分間の黙祷(もくとう)がささげられた。

 ホテルで「自然死」

 デビリョタさんの遺体が客室で見つかったのは11日朝で、この日セビリアで行われることになっていた、14日に発売される自伝「人生は贈り物」のプレゼンテーションを兼ねたイベントに出席する予定だった。

 詳しい死因は不明だが、デビリョタさんの妹、イザベラさんはフランス通信(AFP)に「検視官の話では事件性はなく、事故の後遺症による自然死とみて間違いないと指摘された」と語った。遺族はデビリョタさんのフェイスブックに「マリアは天使のように天国に旅立ちました。彼女とともに過ごさせてくれたことを神に感謝します」と書き込んだ。

 デビリョタさんは1980年マドリード生れ。父が元F1ドライバーで、弟もレーサーという家庭環境で育ち、自身も16歳の時からカーレースに出場するようになった。2001~05年にF3参戦。その後、世界ツーリングカー選手権、ユーロ3000選手権などに参戦し、昨年3月、F1「マルシャ」チームのテストドライバーになった。モータースポーツ大国のスペインでも女性がF1のテストドライバーになったのは初めてで、デビリョタさんは、フル参戦ドライバーに昇格して史上3人目のF1決勝レース出場女性ドライバーになることを目標にしていた。

 事故で片目失う

 しかし、昨年7月3日、英国ロンドン近郊のダックスフォード飛行場で行われた直線テスト中に衝突事故を起こし、5日間意識不明に陥るという重傷を負った。2度にわたる手術で一命は取り留めたものの、右目の視力だけでなく、味覚や嗅覚も失い、深刻な頭痛が後遺症として残った。来月(11月)には頭蓋骨を補強するための再手術を行うことになっていた。

 片方の視力を失ったことで、規定によってF1ドライバーへの道を閉ざされたデビリョタさんだったが、レーサー復帰は諦めなかった。米国では片方の視力がなくてもレースに出られることから、米国での復帰参戦を目指して昨年11月から肉体トレーニングを再開。そして今年7月には、自身の個人トレーナーでフィットネスクラブ経営者のロドリゴ・ミリャン氏(29)と結婚し、二人三脚で復帰準備を進めていた。

 過去2回、F1の年間王者になっているスペインの英雄、フェルナンド・アロンソ選手(32)は13日、鈴鹿での決勝レース前、「今はつらすぎて、マリアの死が受け入れられない。僕自身、彼女からは勇気と強さを教わったんだ」と語った。デビリョタさんは自伝の冒頭部分で「人生は楽しいもの。生きていることの素晴らしさを感じてほしい」と書いていた。短かったが、その足跡は限りなく太いレーサー人生だった。(SANKEI EXPRESS

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