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FRB議長にイエレン氏指名 政治力未知数 「市場との対話」が鍵
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バラク・オバマ米大統領(52)は10月9日、ホワイトハウスで会見し、来年1月末で任期切れとなる米連邦準備制度理事会(FRB)のベン・バーナンキ議長(59)の後任に、ジャネット・イエレン副議長(67)を指名したと発表した。会見に同席したイエレン氏は「あまりに多くの米国人が、いまだに仕事を見つけられずにいる」と述べ、さらなる雇用改善に注力する考えを示した。
議会上院は指名を承認するとみられ、FRBの100年の歴史上、初の女性議長が誕生することになる。オバマ氏は会見で、イエレン氏には金融政策運営で長年の経験があり、議長として「極めて適した有能な人物だ」と強調した。
新議長は、異例の量的緩和など非常時の金融政策を経済の回復に合わせてスムーズに解除し、平時の状態に戻していけるかが問われる。イエレン氏は、極めて緩和的な金融政策に取り組んできたバーナンキ議長の継承者と見なされており、金融市場では指名を歓迎する声が上がっている。
オバマ氏は、2期8年で退任するバーナンキ氏について、金融危機後の経済立て直しで「驚異的な勇気と創造性を示した」と述べ、指導力を称賛。その上で景気回復がまだ力強さに欠けることからFRBのトップ交代を滞りなく運ぶ必要があるとし、今回の人事を「迅速に」認めるよう議会に求めた。
イエレン氏は2010年にFRB副議長に就任した。FRB理事やサンフランシスコ連邦準備銀行総裁として米国の金融政策に長年携わってきた。1997~99年にはクリントン政権の大統領経済諮問委員会(CEA)で委員長も務めた。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪政治力未知数 「市場との対話」が鍵≫
イエレン氏はFRBを率いるバーナンキ議長の後継者として、早くから本命視されていた。金融市場は「政策の継続性が保たれる」と歓迎している。FRB史上初の女性議長としても期待が集まるが、一般には知名度が低い上、政権や議会と渡り合うのに必要な政治力は全くの未知数だ。
世界の市場関係者が一挙手一投足を注視し、発言が株価や為替を大きく動かすポストだけに、マーケットと対話する力も問われる。
FRBの量的金融緩和縮小が中心テーマとなった7月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議。バーナンキ議長の名代として出席したイエレン氏の「独演会」は30分以上にわたった。イエレン氏は丁寧な説明を続け、FRBに批判的だった新興国勢も矛を収めざるを得なかったという。
FRB現幹部の中では金融緩和に最も積極的とされるが、FRB理事を務めた1996年、インフレ懸念が高まっているとして当時のグリーンスパン議長に利上げを迫った逸話もある。議長就任後は、FRBの二大目標である物価安定と雇用拡大を「極めて忠実に」追い求めるだろうというのが元同僚の見方だ。
ニューヨーク州出身。夫はノーベル経済学賞を受賞した経済学者のジョージ・アカロフ氏。(共同/SANKEI EXPRESS)
≪日銀「信頼関係構築に弾み」≫
FRBのバーナンキ議長の後任に日本の金融関係者にもなじみの深いイエレン副議長が指名されたことに対し、日銀や政府内には「信頼関係の構築に弾みがつく」と好意的な見方が多い。
日銀の中曽宏副総裁はイエレン氏が2004~10年にサンフランシスコ連銀総裁を務めていた時代からの“旧知の仲”だ。海外の中央銀行から「円安誘導」との批判を生みかねない日銀の大規模な金融緩和に理解を得るには、「歓迎すべき相手」(日銀幹部)との声も上がる。
ただ、米国の量的金融緩和の縮小が市場に混乱を引き起こせば、日銀が苦心して引き下げてきた日本国債の長期金利が上昇に転じてしまう可能性があり、中曽氏は「金融政策がどうなるかがポイントだ」として行方に注目している。(SANKEI EXPRESS)