お二人とも大学デビュー仕立てにもかかわらず、「勉強のため」「将来のため」などしっかりした動機をもち、立派な印象をうけた。特に清水さんは、「給料の男女格差はまだあるように思える。女性こそ経済的独立を図るために投資は必要だ。」という。その一方で「同性の(投資)友達・仲間が欲しい」と本音を漏らす。投資女子が急増しているとはいえ、まだ女性への投資普及は道半ばだと感じる。
新入生アンケート
二人へのインタビューを通して、印象に残るのが「勉強のため」に投資するということだ。これは二人に限らず、投資に興味を持つ大学生に共通する傾向だ。2大学(慶応義塾大学・明治大学)の投資サークル新入生112人を対象に、今年4月に実施したアンケートでも、同様な傾向が示された。
投資をするにあたって、重視することを問うと、6割を超える学生が勉強になることを挙げる。資金がなく資産運用の効果が望めないからこそ、儲けでなく投資を通じて勉強したいというのは必然といえるが、やはりここが学生ならではの特徴だ。投資というと、専ら、資産形成のために行う人が多いが、学生は投資を通じて、様々な知識やスキルを獲得したいようだ。このことは興味のある投資商品を問うた際に、手軽な投資信託よりも分析を要する個別株式を選択する学生が約3倍多くいたことからも裏付けられている。
なぜ若者が「今」投資に熱中するのか
勉強を目的に投資に興味をもつことがわかった。それでは、その原動力となっているものはなんだろうか。「老後2000万円問題」が話題になるなど、政府の各種施策により、学生にも金融リテラシーの重要性が浸透している。その金融リテラシーこそ、投資を通じて学生の勉強したい・養いたい対象である。
但し、世間で話題になっているから、学生が金融リテラシーの必要性を感じているわけではないように思える。インタビューで「日本にいると実感はないけど、漠然とは欧米諸国との差を感じます。」、「日本の仕事は丁寧だけどスピード感がなく、置いていかれるような印象です。」と2人が答えてくれたように、学生自らが日本への漠然とした不安があるのかもしれない。
漠然とした不安とはなんだろうか。ここでは賃金についてみていく。物価変動を加味した実質賃金推移の国際比較(出所:oecd.statより全労連が作成。民間産業の時間当たり賃金)をみると、日本の賃金は1997年をピーク(基準)として、2020年時点で10%低下する。この20年で、欧米先進国をはじめ、お隣韓国でも各国の実質賃金は20~60%ほど上昇しており、日本だけが貧しくなっているともいえる。
過去の推移ではなく、これからはどうだろう。実質賃金を上げるには、物価に対して賃金を上がることを意味し、物価が下がるか、名目賃金をあげることが選択肢となる。