鉄道業界インサイド

鉄道技術の進歩を象徴する街“蒲田” 過去には熾烈な旅客獲得合戦の舞台にも…

枝久保達也
枝久保達也

 JR・東急電鉄の蒲田駅(東京都大田区)前にある東急プラザ蒲田7階イベントスペースで、10月26日から31日まで「蒲田を走る鉄道まつり」が開催されている。26日にはJR、東急、京浜急行電鉄の各駅長らが出席する異例のテープカットセレモニーが行われ、“オール蒲田”でイベントを盛り上げた。

 オール蒲田で「鉄道まつり」

 イベントではHOゲージとNゲージの鉄道模型が走るジオラマや蒲田駅の歴史を振り返る写真の展示、鉄道グッズの販売、鉄道ゆるキャラである東急の「のるるん」や京急の「けいきゅん」との記念撮影ができる。

 この他、30日には鉄道ファンとして知られるお笑い芸人「ななめ45°」の岡安章介さんとホリプロマネージャーの南田裕介さん、31日には鉄道テクノユニット「SUPERBELL“Z」の車掌DJ、野月貴弘さんのトークショーが行われる(午後1時、3時の2回実施)。開催時間は午前10時から午後8時(最終日は午後7時まで)。

 蒲田はJR、東急、京急の計5路線が走る鉄道密集地帯である。蒲田が属する大田区は1947年に大森区と蒲田区が合併して成立した(大田区という名前は両区の名前から1文字ずつ取ったものだ)。つまり蒲田区は区内全域に鉄道が張り巡らされていたことになる。そして蒲田を通る鉄道はそれぞれ、東京という街における時代の変化を体現するような存在であった。

 蒲田を通る最初の鉄道として開業したのは官設鉄道(現在のJR東海道本線)だが、この時点では蒲田に駅は設置されなかったため、1901年に品川~神奈川間を全通させた京浜電気鉄道(現在の京急)の蒲田駅(現在の京急蒲田駅)が先に開業している。

 官設鉄道は1872年の開業時、新橋、品川、川崎、鶴見、神奈川(1928年に廃止)、横浜の6駅を設置し、蒸気機関車による運転だった。開業4年後の1876年には品川と川崎のほぼ中間に大森駅が開業したこともあり、大森と川崎の間に位置する蒲田駅の開業は1904年まで待たねばならなかった(ちなみに大森と品川の間の大井町駅は1914年の開業だ)。

 対する京浜電気鉄道は、関東では最も早く電車を運行した鉄道事業者である。加減速性能に優れる電車を用いることで、短い間隔で駅を置き、1901年時点で10分間隔という高頻度運転を行った。こうした利便性の高さが沿線住民の心をつかみ、利用者は大きく増加した。

 東海道本線はこれに対抗すべく1914年に電車を用いた京浜線(現在の京浜東北線)の運行を開始。これ以降、現在に至るまで蒲田は京浜(東北)線のみが停車する駅となった。

 京浜線は15分間隔ながら京浜電気鉄道よりも早く京浜間を結んだため、両路線は激しい旅客獲得合戦を繰り広げることになる。蒸気機関車から電車へ、蒲田は鉄道のあり方の変化と、鉄道技術の進歩を象徴する街であると言えよう。

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