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法人減税にもかかわらず 日本の中小・零細企業の体力を弱める「節税保険」

高橋成壽
高橋成壽

 平成から令和にかけての私達の生活は、消費税増税で支払が増え、所得税の増税で手取りが減っています。唯一、会社の税金である法人税だけは国際競争力維持という観点から、減税になっています。国策としての法人減税にもかかわらず中小・零細企業の中には節税を続け、企業体力を失っていることもあります。今回は、日本の中小零細企業の経営力を弱める原因の1つになっている生命保険の節税についてお伝えします。

■会社の節税ニーズ

 会社を経営し、利益が出てくると納税資金をいかに準備するか、という問題が発生します。利益の有無に関わらず支払いが発生する法人住民税、資本金額の水準や売上が一定水準を超えると発生する消費税、利益(所得)が出ると発生する法人税。

 日常の売上金の回収や経費の支払いとは異なるタイミングで待ち構える税金の支払いにより、資金繰りに頭を抱える会社も出てきます。

 社内に番頭がいて、経理や財務の担当者がいれば、納税を加味した資金繰りを検討することもできるでしょう。しかし、中小・零細企業では社長と家族が財務や経理などを担っていることが多いため、年間を通じて資金繰りを考えることまで手が回っていない印象です。

 資本金が1000万円以下で従業員が5人以下の会社を零細企業、資本金3億円以下、従業員300人以下の会社を中小企業といいます。今回は、従業員が100人未満で、役員が家族のみという、ドラマに出てくるような中小・零細企業イメージしてもらえるとよいでしょう。

 業界により利益率が異なるため、ひとくくりにはできませんが、売上規模が数億円から10億円程度ないと、管理部門に部長や担当役員を設置する余裕がありません。そのため、経営の意思決定を社長が一人で行うことになります。

 普段から売掛金の回収期間が長いなど、資金繰りに悩んでいる社長であれば、納税資金の準備はなおさら頭が痛いでしょう。銀行の担当者に相談すれば、長期的な観点から自己資本強化のための増資や納税資金の融資というアイデアが出てきてもおかしくありませんが、実際には短期的なメリットのための節税の提案が出てくるようです。

■税理士と銀行が主導する節税提案

 利益が出ている会社に共通する納税資金対策の解決策として考えられる方法は、生命保険、リース、不動産投資による損金計上があります。

 これらは、銀行や税理士、保険会社、ブローカーによって話が持ち込まれます。今回は、このうちどの会社でも取り組みやすい、生命保険による節税についてのお話となります。

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