鉄道業界インサイド

日本初の新設「LRT」が秘める進化の可能性 カギは定員増と最高速度引き上げ

枝久保達也
枝久保達也

 “雷都”のライトレールは愛称が複雑

 JR宇都宮駅東口から芳賀町の高根沢工業団地まで約14.6キロを結ぶ栃木県の「芳賀・宇都宮LRT」で使用される低床式車両「HU300形」が5月27日、平石停留所付近に整備中の車両基地に到着。31日に報道陣にお披露目された。

 HU300形は、雷が多いことから「雷都」と呼ばれる宇都宮の地域性と、次世代型路面電車のLRT(ライトレールトランジット)をかけて、愛称「ライトライン」と命名された。ややこしいのだが、ライトラインはあくまでも車両の愛称であり、路線の愛称ではない。

 宇都宮市が公式に用いている呼称は「芳賀・宇都宮LRT」で、同線の運営主体となるのは「宇都宮ライトレール」だが、いずれもイマイチピンと来ない。となれば、今後は路線自体がライトラインと呼ばれるようになるだろう。

 ライトラインの製造を担当したのは新潟トランシスだ。同社はライトラインのような低床式路面電車から新交通システム、気動車(ディーゼルカー)、除雪車や軌道モーターカーなどの保守用車両まで、さまざまな用途の車両を手掛ける鉄道車両メーカーで、低床式車両の分野では大阪を拠点とするアルナ車両に次ぐシェアを誇っている。

 ライトラインの車体幅は2650ミリ、全長は約29.5メートル(3両編成)で、国内の低床式車両としては最大級のサイズである。新潟トランシスが2013年から2016年にかけて製造した福井鉄道の低床式電車「F1000形(FUKURAM)」がベースとなっているが、定員はFKURAMの155人(座席定員53人)に対して、ライトラインは160人(座席定員50人)と5人多い。

 定員を多く確保したのは、宇都宮駅から沿線の清原工業団地、終点の高根沢工業団地を中心とした通勤利用が利用の9割を占めると見込まれているからだ。起点から終点まで各駅停車では約44分かかることから、座席は通勤電車並みの座席幅450ミリを確保し、クッション性も高めているという。

 であれば定員を増やすために全長を30メートルよりも延ばせばよいと思う人もいるだろう。だが、LRTや路面電車の根拠法となる軌道法は、他の道路交通への影響を考慮して「車両を連結して運転するときは、連結した車両の全長を三十メートル以内としなければならない」(軌道運転規則第46条)と定めており、これが限界ギリギリの大きさだ。

 ただ、同規則には「ただし、特別の事由がある場合には、国土交通大臣の許可を受けて、この規則の定めるところによらないことができる」(第2条第1項)との例外規定が存在しており、例えば、広島電鉄が1999年に導入した「5000形(GREEN MOVER)」は、(軌道法の制約がない)ドイツ・シーメンス社製であったが故(ゆえ)に、全長が30メートルを52センチ超えていたが、特認を受けて対応している。

 また16.5メートル車4両編成(全長66メートル)を用いて京都市営地下鉄東西線と直通運転を行っている京阪電鉄京津線は、びわ湖浜大津駅(大津市)周辺に約600メートル、自動車と電車が道路を共用する「併用軌道」が存在するが、この区間の走行も特認を受けている。

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