コクピットも例外ではない。デジタルや液晶を使ってはいるものの、フェアレディZ伝統の3眼メーターや、キリリとたちおとしたインパネなどは、かつてのフェアレディZそのものだ。
パワーユニットも同様で、V型6気筒ツインターボユニットを搭載。6速マニュアルミッションと組み合わされる。限られた資料にオートマチックの文言はない。まさか現代においてオートマチック仕様の設定がないとは思えないが、それほど割り切っているのだ。
歴代のS30型、S130型、Z31型、Z32型、Z33型、そして現行のZ34型すべてのエッセンスを取り入れている。全身全霊、どこから眺めてもフェアレディZであることがわかる。
新生日産を宣言
日産は矢継ぎ早にニューモデルを投入すると宣言した。それはつまり、負の遺産を精算し、新しく生まれ変わるのだと口にしたわけだ。だが姿を現したフェアレディZは、過去へのオマージュである。驚きはそこにある。
ただそれも極めて頼もしい戦略に満ち溢れている。近未来的な先進である「アリア」を発表、かえす刀でレトロモダンな「フェアレディZ」をお披露目した。それすなわち、これまで愛されてきた日産アイデンティティを失わずに、技術の日産が力強い歩みで前に進むことの宣言なのだ。日本人にとって伝統的な自動車メーカーであり日産の浮沈は興味のあるところだ。それが炎上するほどに話題になった証拠だろう。日産復活の狼煙は、意表を突くレトロモダンだった。
【クルマ三昧】はレーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。