ストックホルム経済大学でイノベーション・リーダーシップを教える経営学者のロベルト・ベルガンティが、この数カ月、次のことを盛んに話している。
「かつて、リーダーシップとはどんな状況にあっても『私は何でも知っている』という態度が主流だった。しかし、今は違う。未知の事態に『私には分からない』と最初に言うのが大事だ。そして『でも、これを知りたいとの好奇心が働くから、みんなで一緒に探索してみようよ』と語りかけるのが、求められるリーダーシップだ」
ぼくは、今、このセリフを前述した「文化的知識や経験の不適切な適用」に結びつけて考える。
新しいタイプのウイルスのことなのだから「分からない」が第一にくるはずなのに、「どうせ風邪みたいなものでしょう」で未知の部分を抑え込み、「たいしたことのないウイルス」に社会全体が振り回されるのは、なにか社会的な文化的な欠陥もあるのではないかと勘繰るわけだ。
文化的な知識や勘は自分で行動を起こすときの確信に貢献するが、医療現場を第三者が分析をするためにはあまり役立たない、ということではないか。役立たないだけでなく、風評被害のもとにもなる。
これが自戒もこめた、ローカリゼーションマップを使うにあたっての注意事項だ。
【ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。