ローカリゼーションマップ

風評被害を招く感染拡大の背景分析 限られた異文化理解の適用は自戒が必要

安西洋之
安西洋之

 本連載のタイトルにあるローカリゼーションマップの活動をはじめ、およそ10年がたつ。異なる地域の文化を少ない情報で如何に理解するか。特にビジネスを前進するために「この市場は、傾向をこう見立てれば良いはず」との確信をどう獲得するか、これをテーマの1つにしてきた。

 大規模な市場リサーチを実施するための資金的、時間的余裕が充分にないなかで、短期間で「方向を決めるための」確信をもつ必要がある。だが、それには少なくても3つの異なった事象から仮説をたてることを、ぼくは強調してきた。それで立体的な全体イメージがもてる、と。

 日本のビジネスパーソンに限っていえば、次の2つの点が弱みになりやすいと考えてきた。

 まず学校教育。例えば、欧州の小中高校での美術教育は実践よりも美術史の比重が高く、作品の時代背景や作品の意図を解釈することに重きをおく。そうすると欧州のビジネスパーソンが日本に旅行したとき、京都の博物館でみる工芸品と東京でみる工業製品の間に共通点を見いだそうとする。そして、その共通点を日本の文化の特徴だと理解する。しかし、日本のビジネスパーソンはこういう考え方にあまり馴れていない。だから全体像を描きにくい。これが1点だ。

 2点目は確信そのものを持ちにくい傾向がある。自分1人で考えてそれを主張することが苦手だが、もとはといえば、確信をもつこと自体に馴れていない。およそ確信は「好き」「美しい」「美味しい」といった何らかの個人的審美性に基づくことが多いが、日本のビジネス環境では、この審美性の発揮を抑える習慣がついている。

 以上のように考えてきたが、最近、説明を少々付け加える必要を感じている。

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