鉄道業界インサイド

東京圏の混雑率は解消可能なのか 11路線が乗車率180%超という実情

枝久保達也
枝久保達也

 輸送状況が改善した小田急線

 東京圏の混雑路線が解消される見通しはあるのだろうか。

 構想からおよそ半世紀かけて代々木上原~登戸駅間を複々線化(線路を片道1線から2線に増強する工事)することで大幅な改善を実現したのが小田急電鉄だ。2018年3月のダイヤ改正で運行本数を1時間あたり29本から36本まで増発し、混雑率は194%から157%まで緩和。快速急行など一部の優等列車は依然として混雑しているものの、遅延の減少や所要時間の短縮など路線全体の輸送状況が大きく改善した。

 しかし、長期的には沿線人口、鉄道利用者の減少が避けられない中で、莫大な費用と工期を要する複々線化の推進は困難だ。多くの事業者は既存設備の改良による輸送力増強でなんとか凌ごうと必死である。

 例えば、最混雑路線の東京メトロ東西線は、現在1時間あたり27本運転している列車を30本まで増発するために、南砂町駅、木場駅の改良と飯田橋~九段下駅間に折返し設備設置を進めている。実現すれば混雑率は約180%まで緩和する計算だが、それでも国交省の目標値を何とか下回る程度の効果しか見込めない。さらに列車を運行しながら地下構造物を作り変えるのは容易ではなく、完成は当初目標の2020年度から2027年度までずれ込む見通しだ。東京メトロはオフピーク通勤促進キャンペーンを実施してピーク分散に努めているが、抜本的解消には程遠いのが実情だ。

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